『パレスチナをめぐる二つの動き』

2017年2月25日

 

 最近になって、パレスチナをめぐり、二つの動きが出てきた。ひとつはアメリカのトランプ大統領が、パレスチナ・イスラエル問題の解決をめぐり、穏やかな発言をしたことだ。

 その穏やかな発言とは、彼が二国家設立による、パレスチナ・イスラエル問題の解決を望みながらも、最終的には両者間の合意による選択が一番だ、としたことだ。彼に言わせると、一国家にすることは結果的に、一つの国の中に二つの制度を、持ち込むことになるというのだ。

パレスチナ側に言わせれば、それは差別であり、アパルトヘイトだということで、長期的に抵抗が続くことになる、という判断だ。従って、トランプ大統領は公平な方法は、二つの国家を設立するのがいい、という結論になる。

しかし、トランプ大統領は一国家にするか二国家にするかは、あくまでもイスラエルとパレスチナ双方の、選択にゆだねるべきだ、という考えであり、それを明らかにしたということだ。

トランプ大統領のイスラエルびいきは、国際的にも知られており、いまのままで行けば、アメリカは必ずしかるべき役割を果たす上で、支障をきたすことになる。それが今回のトランプ大統領の、発言に至らせたのであろうと思われる。

こうした流れの中で、イスラエルでもパレスチナでも、将来どうイスラエル・パレスチナ問題を解決するのか、という議論が持ち上がっている。そうした中でヨルダン川西岸地区の、ラマッラ市の入り口に近いカフル・アカブに、突然、意味深長な大看板が登場したのだ。

この看板の何が問題かというと、その看板にはアラビア語で『もし選択肢が二国家か一国家ということであれば一国家を選択する』と書かれてあったのだ。つまり、この看板を掲示した人物は、二国家制に反対であり、一国家を選択する、と言っているのだ。

この看板は真夜中に取り付けられたようだが、近くイスラエル軍が取り外しに行く予定であり、看板を取り外すことは、大半のパレスチナ人にも、支持されるということだ。

パレスチナ自治政府にしてもパレスチナ一般市民にしても、一国家にするということは、パレスチナ国家を設立する夢を、諦めることになるからだ。同じように、イスラエル側も、自国の中にパレスチナ人を抱え込むことは、困難を増すだけであり、将来にまで、問題が引きずられてしまう、と考えている。

しかし、他方にはパレスチナとイスラエルが、ひとつにされれば、結果的には、パレスチナ人の人口が、イスラエル人(ユダヤ人)の人口を上回り、統一された国家は、パレスチナ人が牛耳ることになる、という考えを持っている人もいる。

イスラエルのクネセト(国会)の議員であるテイビ氏(パレスチナ人でイスラエル国籍保持者)は『一国家制でもいい、ただし、私が首相になれるのならば。』と語って皮肉っている。

もちろん、いまの段階でイスラエルとパレスチナが一国家になっても、パレスチナ人の人口が上回るとは限らないので、直ぐにテイビ氏が首相になる、可能性は無いだろうが、将来的には十分にありうる話なのだ。

それはイスラエルが豪語してきている『中東で唯一民主的な国家イスラエル』という立場をイスラエルが捨てない限り、現実味を帯びてしまうのだ。

今後イスラエルとパレスチナが、どのような選択をするのか、明らかでは無いが、二国家にしても難問山積であり、一国家も然りだ。従って、結論はなかなか出ない、ということであろう。