エジプト政府にとっては、いまの同国の経済状態は、まさに地獄であろう。それは庶民にとっても同じだ。物価は値上がりし、物資は不足し、明日の生活がどうなるか、分からない状態なのだ。
エジプトの現在の失業率は、公式発表で(実質はもっと悪い)14パーセントとなっており、若者の失業率は40パーセントにまで、跳ね上がっている。つまり、若者の2人に一人が、仕事の無い状態にある、ということだ。
エジプトはシーシ大統領の肝いりで、第二スエズ運河を作り、運河収入が増える予定だったが、世界的な経済不況などから、減ることはあっても、運河収入は増えていない。
巨大なガス田が、ナイルデルタ地帯や地中海海底で、発見されているが、未だ本格的な生産段階には、入っていない。エジプトは観光収入も、高いポテンシャルを、持っているのだが、テロの不安から伸び悩みの状態にある。
エジプトは可能性としては、大きいものがあるのだが、それが現実化していないのだ。外貨準備高は減り、シーシ大統領は3年間の期間で、120億ドルをIMFから借り入れる、契約を交わした。
その結果、エジプトのポンドはフローテング制になり、たちまちにして半額に値下がりし、現在は18ポンドになっている(以前は8ポンド台だった)。このためシーシ政権はエネルギー価格を値上し、公共費への援助を減らすことになった。
結果は、砂糖、米、食用油、薬品などが品不足となり、値上がりしている。政府は薬品については、軍の工場で増産して、市場に供給すると言っているが、未だその成果は、出ていないようだ。
シーシ大統領は苦境下にある、エジプトの経済の見通しについて、楽観論を国民に語っている。彼の考えではこれから6ヶ月が最も苦しい時期であり、それを過ぎれば改善していくというのだ。その根拠はエジプト経済が、4~4・5パーセント伸びていくからだ、ということのようだ。
先日起こったコプト・キリスト教会テロ事件の後、シーシ大統領が早速現場に駆けつけたことで、コプト教徒からの受けは良くなっているが、ムスリムの国民の間の受けは良くなく、悪化してさえいる。
先日は離婚法をめぐり、エジプトの宗教権威であるアズハルのトップと、シーシ大統領との意見が対立して、もめてもいるのだ。加えて、シナイ半島北部にいるISなど反政府勢力は、次第に南下し、カイロに迫ってもいる。
シーシ大統領の政権は、現在抱える難問をクリアでき、発展段階には入れるのか、あるいは躓いて倒れるのか、極めてデリケートな段階にあることは、確かなようだ。しかし、私はエジプトの経済改善に期待を抱いている一人だ。