『トルコはシリア北部一帯を領有の意向か』

2017年2月15日

 

 トルコのエルドアン大統領は、シリアの北部地域アルバーブでの、勝利が近いと語っている。ここを落とせば、あとは他の地域を落とすことも、容易になると考えているようだ。それは、シリア北部地域全体とトルコとをつなぐ、幹線道路がアルバーブを通過しているからだ。

 トルコ軍がアルバーブを抑えてしまえば、IS(ISIL)が首都と言ってきた、ラッカの攻略も容易であろうし、マンジブも自動的に落ちる、という事であろう。そうなれば、シリア北部で他にはこれと言った、要衝はなくなるということだ。

 このシリア北部を占領してしまえば、ほぼ45千平方キロメートルの地域を、トルコは支配することになるらしいが、トルコにはその土地をシリアに返還する気は、無いのではないか。

 トルコのエルドアン大統領は、これまで安全地帯の設立を、何度となく訴えてきているが、それもシリアの北部地域にということだ。この安全地帯を創設するという事は、その管理が難しいことから、半ば永久的にトルコはその安全地帯を、支配することになる、という事であろう。

 シリア北部に安全地帯を創設することについては、アメリカがやや前向きではあるが、ロシアは困難であることを強調している。外敵の攻撃から安全地帯を守るためには、そこに治安維持のための軍隊を派遣し、駐留させなければならないし、その軍隊を守るためには、重装備をさせる必要も出て来よう。

 加えて航空攻撃もありうるので、戦闘機や監視のための飛行機を、飛ばすことになろうが、そうなると、その飛行機を守る手だても、必要になろう。つまり、安全地帯や人道的理由という、甘い言葉でこの安全地帯の創設を、現実のものにしていくことになると、相当の負担が関係諸国には、かかってくるという事なのだ。

 トルコは領土的な野心と、トルコ国内にいるシリア難民の、一部追放を考えて、安全地帯を創りたいのであろうが、ロシアやアメリカには、安全地帯を創設することは、何のメリットも無いのだ。

 アメリカは出来るだけ、自国軍を投入したくない、と考えていることから、現実にこの安全地帯設立となれば、トルコがその多くを、負担せざるを得なくなろう。エルドアン大統領はかつての、オスマン帝国の住民たちを守る、という大義前提で大宣伝をするだろうが、その費用はばかになるまい。

 トルコの現在の経済状態は、極めて悪いのに、そのような負担を背負うことになれば、トルコの経済はますます悪化するだろう。エルドアン大統領にすれば、業者から難民施設を創ることで、賄賂を受け取るつもりであろうが、トルコ国民には大迷惑であろう。