『イラク監視・孤立するバグダーデイ』

2017年2月 9日

 

 IS(ISIL)のカリフ(宗教面を含めたイスラム国家のリーダー)を自称し、新しいイスラム抵抗運動を、世界に広げるかに見え、一時期はイスラム過激派にとって、英雄的な存在であったアブーバクル・バグダーデイが、このところほとんど鳴りを潜めている。

 先日、少し彼について触れたが、彼の指導にIS(ISIL)の幹部が、異議を挟むようになって来ている。広大なシリアとイラクの領土を支配していたものが、アブーバクル・バグダーデイのミスリードで、相当部分を失うことになった、とこの幹部は語っている。

 そのアブーバクル・バグダーデイの近況について、イラクのアバデイ首相がフランスの24テレビとの、インタビューのなかで、次のように語っている。アバデイ首相によれば、『彼はほとんど孤立している。彼には信頼できる人物がいない。つまり彼はつまはじきに、されているのだ。』というのだ。

 アブーバクル・バグダーデイと他のテロリストたちの連絡は、極めて限られていて少ないし、あたかもアブーバクル・バグダーデイは、存在しないような、状態になっている、という事のようだ。

 アブーバクル・バグダーデイがこうした状況に陥ったのは、彼の友人幹部たちの多くが、戦死したからだということだ。あるいは、一部の幹部たちは、組織から除外されているからだ、という事のようだ。 

 IS(ISIL)がイラクのモースルを占領したのは、20146月のことだったが、イラク軍は昨年の10月に、そのモースルをほぼ解放している。

 このアバデイ首相のコメントは、ほぼ正確であると思われる。アメリカもイラクのモースル解放作戦は、ほとんど終わったとみなしており、これからはシリアのラッカを陥落させる、とトランプ大統領は息巻いている。

 アメリカがラッカを奪還する手段として、当てにしているのはトルコ軍であり、そのために、トランプ大統領はエルドアン大統領と27日に電話で対談し、その後に、CIA長官をトルコに派遣しているのだ。

 どうやら、アメリカの大統領がトランプ氏に代わってから、イラクとシリアのIS(ISIL)は、相当追い込まれ、敗退する方向に変わってきているようだ。それは、簡単に言ってしまえば、アメリカの資金と、アメリカが指示する国(サウジアラビアやカタール)からの資金が、流れて来なくなったためであろう。

 アバデイ首相はアブーバクル・バグダーデイの近況について語ったが、彼が今どこにいるのかについては、明かさなかった。それは第一級の、機密事項だからなのであろう。