数週間前に、イラク軍は同国北部の重要拠点である、モースルの奪還が近い、と発表し、既に90パーセントが解放された、と語っていた。事実はその通りであろうが、どういうわけか残りの10パーセントが、いまだに解放されないでいる。
実はIS(ISIL)側にとっては、モースル死守の意向が強いようだ。同地域には皆地雷が設置されていて、市街地には踏み込みにくいようだ。家屋を調べると中には靴型の爆弾があったり、銃器が隠されているということだ。
IS(ISIL)側が空爆から守るために製造した、疑似車両の工場の写真や、車がインターネット上で公開されている。木造の車が並んでいる写真だった。この模擬車両を使って、空爆を引き寄せ、本物の車両を守るという作戦は、以前に他の戦争で、実行されていたようだ。
そのことは、IS(ISIL)側が世界の戦史を、学んでいるということの、証であろうか。また加えてIS(ISIL)側は科学技術を駆使して、新型の武器の開発製造も、行っているということだ。
そうした流れのなかでは、化学兵器などは、幼稚なレベルという事であろうか。化学兵器工場はイラク軍によって、突き止められている。
そして、こうした武器だけではなく、IS(ISIL)側によって地下トンネルが、縦横無尽に掘られてもいる。そのトンネルを使って、IS(ISIL)の戦闘員たちは逃亡し、急襲しているということだ。そのため、トンネルの発見と破壊が、モースル奪取の上で、重要な作戦になっている。
キルクークの近くやラマデイでは、地下トンネルが発見され、イラク軍によって破壊されている。同時にIS(ISIL)側の戦闘員が、あちこちで逮捕されるようにもなって来ているが、それはIS(ISIL)の戦闘員の戦闘意欲が、大分低下していることを意味しているのではないのか。
IS(ISIL)側が不利な戦闘を続けていることは、IS(ISIL)の戦闘員にも分かろう。しかも、資金難から給与の支払いも、滞っていると伝えられている。これでは何のために戦っているのか、分からなくなってしまおう。IS(ISIL)側の戦闘員の多くは、聖戦を目的としているのではなく、金を得ることが目的の出稼ぎ者たちであり、収入を得ることを目的として、この戦闘に参加している者が少なくないからだ。
アメリカを始めとする、合同軍によるIS(ISIL)に対する空爆も、激化してきている。これまでは、アメリカ軍側は暗黙の了解のもとに、IS(ISIL)と連携しており、IS(ISIL)に対する攻撃は、控えられてきていたのだ。そればかりか、アメリカ軍の輸送機が、医薬品や食料、武器、弾薬までも、上空から投下してくれてもいたのだ。
そうしたIS(ISIL)とアメリカとの隠れた、良好な関係はほぼ崩れた、という事であろうか。しかし、だからと言ってIS(ISIL)とアメリカとの関係が、完全に切れたとは考えるべきではあるまい。アメリカはIS(ISIL)を、もう少し利用し続けたい、と思っているのではないのか。
いまモースル攻撃が停滞状況にあるのは、イラク政府に対するアメリカの、圧力によるものかもしれない。その可能性は低くないだろうとみている。