リビア統一政府のセラジ首相が、ブリュッセルを訪問し、EU側に対しリビアへの援助を要請した。この援助は通常の援助ではなく、リビアを経由地として、アフリカらヨーロッパ諸国に流入する、経済難民を阻止するためのものだ。
従って、援助の内容は資金もあるが、海上警備用のコースト・ガード・ボートも含まれている。また、海上を警備する警備員に対する、訓練も援助のなかには、含まれている。
今回のセラジ首相のブリュッセル訪問は、近くマルタで予定されている、EU諸国の首脳による、難民対策会議が開催されることを、考慮したものだった。セラジ首相はこのEUの会議に、具体的に要請項目を提示することで、リビアがいま、何を援助に求めているのかを、明確にすることが出来るということだ。
同様の問題で、トルコはEU諸国から、60億ユーロの援助を取り付けているが、リビア側は金額を提示していない。セラジ首相はあくまでも、要請するのは少額であり、リビア側から言い出す問題ではない、と謙虚な立場を取っている。
2016年には、リビア経由でヨーロッパに流れ込んだ、アフリカ移民の数は、181000人にも達しており、これはEU諸国にとって、緊急対応を要する頭の痛い問題だ。従って、EUはセラジ首相の要請に、しかるべき返事を用意することは確かであり、それはマルタ会議の後であろうか。
リビアがカダフィ大佐によって、統治されていた時代には、こうしたアフリカ難民の、ヨーロッパへの流入は、ほとんど話題に上らなかった。それは、アフリカ人がリビアでしかるべき収入を、得ることができていたからだ。
だが、今ではリビアの国内状況は混乱し、石油の輸出がままならず、リビアそのものが資金難に陥っている。このため、アフリカからリビアに入った難民たちは、ヨーロッパを目指すことになるのだ。
今回のセラジ首相のブリュッセル訪問で、ヨーロッパ諸国のコースト・ガード・ボートや艦艇が、リビアの水域まで入って、アフリカ難問のヨーロッパへの流入を阻止することも、検討されよう。それは、リビアにとっては屈辱的なことだが、仕方あるまい。
リビア統一政府のセラジ首相とは反対に、東リビア政府のハフタル将軍は、ロシ訪問を機にロシアとの関係を、強化さあせており、今回はベンガジの戦闘で負傷した、自軍兵士70人をロシアに送り、治療することになっている。