シリアの和平を実現することを、目的として開催されたカザフスタンの、アスタナでの会議は、初日から躓いているようだ。この会議は、ロシア、トルコ、イランがスポンサーになって、開催されているものだ。
アスタナ会議が躓いているのは、シリアの反政府側があくまでも、停戦を合意し、ロシアとトルコが成立させた停戦状態を、延長したいということだ。反政府側はこの停戦時期に、再度武器を集め体制を整えるのは、当然であろう。しかし、シリア政府側はこの会議をステップに、何とか政治的解決に、持ち込みたいようだ。
トルコが支援するFSA(自由シリア軍)は、あくまでもバッシャール・アサド大統領の辞任を主張しており、そこに至るプロセスとしては、国連の仲介による臨時政体を、創り上げたいということのようだ。
反政府側の14の組織は、シリア政府とは対面式の協議参加を、見合わせている。また、シリア政府と反政府組織は共に相手の、戦争犯罪に対する非難合戦を行っている。
イラン政府としては、今回の会議を通じて、自国のシリアへの影響力を、増したいと望んでおり、それが成功すれば、イランはイラン・イラク・シリア・レバノンというシーア・ルート(イランを中心とする、シーア・イスラム圏)を確立することが、出来るようになるのだ。
アスタナ会議にはヘズブラやシーア派ミリシアは参加していない、イランはシリアに、アフガニスタン人やパキスタン人3万人を、戦闘員として送り込み、アサド大統領側支援を行っている。
ロシアとしては、この会議の成功の、保証人となりたいところだが、どうもスムーズには、進まないようだ。そうしたなかで、一縷の望みは、反政府側の代表の一人として、マナス・トラース氏が参加したことだ。
彼は元将軍であり国防相だった、ムスタファ・トラース氏の子息で、バッシャール・アサド大統領とは、親しい関係にあった人物だ。現在でも二人の関係が、険悪だという情報は無い。
ロシアは彼を臨時政府の核として(臨時大統領)反政府派と政府側とを、一つに纏めたい、考えのようだ。しかし、それはバッシャール・アサド大統領を、失脚させるものではなく、時間をかけてシリア問題を解決していく、プロセスを作り上げたいということだ。
果たしてこのロシアの考えが、反政府各派に受け入れられるのか。また、バッシャール・アサド大統領側から受け入れられるのか疑問だ。そして、バッシャール・アサド大統領体制を全面的に支援している、イランが首を縦に振るか、という問題もある。
会議開催前から、バッシャール・アサド体制をめぐり、ロシアとイランとの間には、意見の対立が生まれていたし、それにトルコの利益も絡んでいるのだから、そう簡単には前進すまい。