ヨルダンとイラクが両国の国境を、開放することに合意した。常識的に考えて、これはヨルダンにとって、極めて危険な動きであることが分かろう。イラク・ヨルダン国境が解放されれば、イラクから多数の難民が、ヨルダンに流入して来よう。
それを承知で、ヨルダン国王が下した、人道的な褒めるべき決断だ、というのだろうか。人口の少ない何の資源も無いこの国が、多数の難民を抱え込むことの持つ、危険性がわからないのだろうか。
既に、いままでイラクからは、旧バアス党幹部など、旧体制の幹部たちが、ヨルダンに多数移住している。彼らは資金的にも余裕があり、ヨルダンで恵まれた生活を、送っているのだ。
しかし、これからヨルダンに入ってくるイラク人たちは、まさに『ほうほうの体で、戦火から逃れてくる人たちなのだ。彼らはこれと言った、価値ある物も持たず、着の身着のままで、やってくるのかもしれない。
ほとんどがヨルダン政府の、援助を必要としよう。その援助にヨルダン政府は、耐えられるのであろうか。あるいはそのことが、ヨルダン国民への福祉予算を、削減させることになり、結果的にヨルダン国民の間から、政府非難の行動が起こるのではないか、という懸念があろう。
ヨルダンは大半がパレスチナ人で、構成される国家であり、ヨルダン・オリジナルの国民は少数派であり、王家はサウジアラビアから来たいわば『よそ者』の王家なのだ。それだけに王家には、脆弱な部分があるのだ。
しかも、イラクから難民がヨルダンに入ってくる場合、IS(ISIL)のメンバーも紛れ込んでくる、可能性は高い。それはトルコでも起こっているし、ヨーロッパでも起こっているのだ。エジプトのシナイ半島で、活動しているIS(ISIL)も、あるいはシリアからの難民に紛れ込んで、入国していたのかもしれない。
それでは何故、ヨルダン政府はイラクとの国境を、開放したのであろうか。実はヨルダンはイラクの石油に、依存してきた経緯がある。イラクはヨルダンに対して無償、あるいは廉価で石油をヨルダンに、提供していた時期がある。
今回の国境開放に当たっては、イラクンの石油を運ぶ、パイプ・ラインをヨルダンの、アカバ港まで引くという話がある。加えて、イラクとの貿易促進があるのだ。つまり、ヨルダン国王は利益を優先するあまり、危機管理を怠ったのではないのか、ということだ。
あるいはアメリカによって、国境開放を押し付けられたのかもしれない。そうであるとすれば、ヨルダンの外交は脆弱だ、という事ではないのか。アメリカの言うがままになる政府は、日本もヨルダンを笑えた義理ではないのだが。