1月8日にエルサレムで起こった、トラックを使ったテロは、今後のイスラエルのパレスチナ対応を、激変させる危険性がある。これまで、イスラエルの人道主義者や、左翼政治家が行っていたことが、イスラエル国民の間で、受け入れられなくなる、可能性が出てきたからだ。
テロリストを生んだジャバル・ムカーベルと、イスラエル側との間には、防御壁があったのだが、人道主義者や左翼政治家の反対で、一部撤去していたようだ。
今回のテロを機に、通常のトラックも大きな武器になり、多数の人達を殺傷する能力を持つ、武器に変わることを、パレスチナ人は学んだものと思われる。
トラックを盗みそれを運転して、イスラエル人が密集する場所に行き、突っ込めば何人も殺傷させることが出来る、ということが分かったはずだ。
ただ、今回のテロで救われたのは、イラクやシリアなどとは異なり、強力な爆弾がそのトラックには、搭載されていなかったことだ。そのために、4人の死者と15人の負傷者程度で、済んだものと思われる。もし、強力な爆弾が搭載されていて、爆発していたら、何十人もの死者負傷者を、生んでいたことであろう。
犯人はエルサレムに近いジャバル・ムカーベルの出身で、この街はいままでにも、入植者を襲うテロの犯人が、出ているところだということだ。例えば、2015年には2人の入植者が襲われ、死亡している。
イスラエル政府はこのテロ事件の後、テロを賞賛するような人物は、逮捕することを決め、テロリストの遺体は家族に、引き渡さないことにしたし、テロリストの家屋も、破壊することを決めている。
今回のテロリストは、IS(ISIL)に感化された人物であった、と見られているが、やっとパレスチナ人の間にも、IS(ISIL)に感化される人達が、出てきたということであろうか。しかも、それがガザ地区ではなく、ヨルダン川西岸地区だということが、重要なポイントだ。
ヨルダン川西岸地区の住民の抵抗闘争は、パレスチナ自治政府の規制が厳しいためか、ガザ地区に比べ穏健なものだったが、これからは様相を激変させるのではないか。つまり過激な闘争に変っていく、ということだ。
ヨルダン川西岸地区には、武器の工場もあるが、爆弾を製造するのは、あまり難しくは無かろう。イスラエル人の間には武器を、パレスチナ人側に密売している輩もいる。トラックと爆弾が結びついたとき、パレスチナのテロは大規模なものとなろう。車爆弾の大規模な殺傷能力は、既にイラクなどで実証済みだ。
イスラエル政府も私が予測する以上に、予測しているはずだ。そうなると、イスラエル側の警備は相当厳しいものに、なって行くのではないのか。その結果、ヨルダン川西岸地区からイスラエルに、働きに出ることは、厳しく制限されよう。
イスラエル政府とパレスチナ自治政府との、治安のための交渉も、あまり成果を挙げなくなるであろう。そして、それはマハムード・アッバース議長の力を、弱めることにも繋がろう。パレスチナ人たちは、今回のテロを機に、地獄の入り口の前に、立たされたのではないのか。