『トルコ首相イラク訪問イラクから撤収合意』

2017年1月 8日

 

 トルコのユルドルム首相が、イラクの首都バグダッド市を訪問し、アバデイ首相と討議した。今回の訪問と討議の目的は、イラクのバシカ基地に駐留する、トルコ軍400人を、撤収させる問題だった。

 2016年以来、イラク軍の訓練を理由に、トルコは軍をバシカ基地に派兵していたが、今回の訪問での合意で、撤収することを合意したようだ、しかし、合意内容がどのようなものであるのかについては、詳しい説明がトルコからもイラクからも、行われていない。

 トルコが今回、イラクのバシカ基地から、軍を撤収させることを決めたのには、幾つかの理由が推測できる。第一に考えられることは、派兵費の負担が厳しい状況にある、ということだ。トルコの経済状態は相当悪化しており、少しでも経費を減らしたい、と考えていよう。

 第二の理由は、シリアから流入してくる、IS(ISIL)やクルドのテロリストを、抑えたいということであり、出来るだけ多くの兵力を、シリア国境に集結し、シリアのトルコに通じるルート上の街、例えばアルバーブなどを、落としたいと考えていよう。このところトルコ国内では、テロ事件が頻発しており、是非とも早急に、手を打たなければ、ならない状態にある。

 第三の理由は、モースル戦でイラク軍が、ほぼ勝利したことにより、トルコ軍が長期駐留することは、今後の両国関係上プラスではない、という判断もあろう。イラクはトルコにとって、経済的に深い関係にあるのだ。

 イラクのバシカ軍事基地への派兵は、トルコにとっては橋頭堡を、確保する程度であり、そこを拠点に、軍事行動を行っていたわけではないので、あまりプラスにはなっていなかったろう。

 今回の訪問時の合意では、トルコとイラクがPKKIS(ISIL)への攻撃で、合意しているということであり、これでトルコ軍はイラク国内への、軍事攻撃を正式に行うことが出来るように、なったということだ。

 以前、トルコがモースル戦などを始め、イラクでの戦闘に参加しようとした際に、アメリカはイラク政府とトルコ政府は、合意していないのだから、参戦すべきではない、と拒否していたが、今回の合意で、トルコは動きやすくなった、ということであろう。

 トルコの外交は、単純ではなく、一歩後退すれば二歩前進する、というのが常だ。今回も、バシカ軍事基地からは撤収するものの、その見返りとして、イラク国内にいるIS(ISIL)PKK,クルド・ミリシアへの軍事攻撃に、正当性を得た、ということであろう。