『険悪になってきたトルコ・アメリカ関係』

2017年1月 5日

 

 一時期までは、何時でもホワイト・ハウスを訪問できる、と豪語していたトルコのエルドアン大統領は、今では全く歓迎されない人物に、なってしまったようだ。そのため、彼がアメリカを訪問するのは、国連の会議参加時ぐらいなものになっている。

アメリカを訪問し国連の廊下で、すれ違う時に交わした短い会話を、エルドアン大統領はあたかもオバマ大統領と対談したかのように、トルコ・マスコミで伝えていたのだが、それももう、嫌になったのかもしれない。

最近では、トルコの進めるIS(ISIL)攻撃に、アメリカ軍が協力しない、と怒りをあらわにしている。実はトルコ軍のシリアへの攻撃、しかも、アルバーブへの攻撃は、IS(ISIL)もさることながら、主要なターゲットは、クルドのミリシアなのだ。        トルコはアメリカに対して、再三に渡りアルバーブのIS(ISIL)攻撃に、協力してくれと要請してきたが、アメリカ軍は動こうとしない。そのため、トルコの国防相や首相が、アメリカの冷たさに腹を立て、非難を始めている。

トルコの南部の街アダナの近郊にある、インジルリク空軍基地はNATOやアメリカ軍が使用しているが、そこからは、アルバーブのIS(ISIL)攻撃に、一機のアメリカの戦闘機も、飛び発っていないのだ。

トルコの首相や国防相は、アメリカがインジルリク空軍基地に、居座っているのは意味がないとし『もし、アメリカが支援してくれないのであれば、なんでインジルリク空軍基地に、いる必要があるのか。』と言い出している。

同じように、エルドアン大統領も『アメリカはアンカラに対する、航空支援に失敗した。我々はアルバーブを解放しようとしているのだ。』とアメリカを非難している。

こうまで、トルコ・アメリカ関係が悪化してくると、以前から言われている、トルコのロシアに対する、空軍基地使用許可が、出るかもしれない。しかも、それがインジルリク空軍基地ということになれば、状況はますます複雑になろう。

その場合、アメリカ軍はインジルリク空軍基地から、出て行けとトルコに言われるかもしれないが、そうなれば、完全にトルコとアメリカとの関係は、切れることになる。

そこまでトルコは、踏み切るのであろうか。インジルリク空軍基地はNATO軍やアメリカ軍の、中東における重要な、軍事拠点となっているのだ。NATO軍もアメリカ軍も、トルコのインジルリク空軍基地を、失うことになれば、中東地域における軍事能力は、大幅に後退することになろう。

トルコの上海5参加意向や、ロシアや中国との自国通貨での貿易協定など、アメリカにしてみれば、昨今のトルコの動きは、不愉快極まりないことが、多すぎるのではないか。アメリカが先にトルコを潰すのか、トルコが先にアメリカに三行半を投げつけるのか、そんな時期に今のアメリカ・トルコ関係はあるのではないか。