『イスタンブールテロの実態』

2017年1月 2日

 トルコの第二の都市、タンブール市で起こったテロ事件は、39人の人々の生命を奪った。刻々と寄せられる情報を追っていると、いかに悲惨なものであったかが分かる。死体の中にうずもれていて助かった人の話や、親の制止を聞かずイスタンブール市に向かい、犠牲となったイスラエルの若い女性の話など、涙をそそるものが多い。

今回のテロ事件では、未だに何処の組織も犯行声明を出しておらず、誰がやったのか分かっていない。トルコ警察は無差別に『犯人らしい人物』を逮捕しまくっているようだが、そんなことでは犯人は捕まるまい。

犯人はナイトクラブ・レイナの入り口で、警備に当たっていた警官を射殺し、中に入り銃を乱射しまくった、ということだ。彼はサンタクロースの服装をしており、誰もテロリストとは、思わなかったのであろう。

そして39人を射殺し、40人以上の人たちを、負傷させて逃走した。まさにプロの手口であろう。普通のテロリストとはどうも異なる気がしてならない。犯人は冷酷であり、冷静に犯行を実行した模様だ。犯人は既に国外に、逃亡したのではないのか。

ここで問題なのは、エルドアン大統領がこれまで、7月15日の起こったクーデター未遂以来、あらゆるテロに付いて、FETO(ギュレン派)の仕業だと叫んできたことだ。全ての悪は、ギュレン派によるものだと簡単に判断して決め付け、対応してきたことだ。

結果は、有能な警官や検察、裁判官や情報部員の多くが、職を追われ刑務所に送られたことだ。この結果、現在のトルコには犯罪を取り締まる、能力を有した者がほとんどいないということだ。したがって、テロは起こしやすい状況になっているのだ。

今回のテロ事件の後、ギュレン派の人に意見を聞いたところ、彼は明言はしなかったものの、エルドアン大統領が仕組んだのではないか、というニュアンスの発言をしていた。これまでも、幾つかの大型テロは、エルドアン大統領によるものではないか、と噂されてきていた。

つまり、今のトルコでは、エルドアン大統領派とギュレン派が、お互いに敵意を強めており、犯罪の責任を相手側に押し付ける雰囲気が、広がっているということだ。これでは犯人は、ますます分からなくなってしまおう。

今回のテロ事件の背後に、社会の不正問題や、社会正義の欠落がある、などと言うつもりは無い。あくまでもテロリストによる、テロ行為であろうと考えたい。

トルコでは反政府側の人達が、エルドアン大統領側による無差別逮捕を『魔女狩り』と評していたが、今回のテロ事件をきっかけに、魔女狩りがますます拡大していくような、気がしてならない。

いま一番トルコに必要なのは、冷静さであろう。それが唯一、真犯人を探し当てる方途ではないのか世界全体が大変革の中で混乱し、冷静さを失ってしまっている今こそ、日本人の冷静な対応姿勢を広げたいものだ。