NO4375 1月1日 中東TODAY
『中東穂国の2017年予測』
毎年1年の始まりに、各国のその年を、予測してみることにしている。予測は述べるまでも無く、それまでの各国の動向の延長線上にあるわけであり、予測が正確かどうかは、それまでの各国の足跡が、ものを言うものだと思う。
さてそれでは今年はどうなのであろうか。述べるまでも無い、大はずれもあろうし、大当たりもあろう。その事に一喜一憂する必要は無いし、当たったからといって得意になることも無い。
アメリカの大統領選挙で、トランプの当選を当てた、と大声で喜び自慢する愚かな老人専門家たちがいたが、あれなどはみっともない、歳も考えない愚かな振る舞いの、典型であろう。
:エジプト
今年のエジプトは、経済的にも大分持ち直し、改善の方向に向かうのではないか、と予想している。それはエジプトの経済状況が、劣悪であるにも関わらず、昨年後半から、外国の資金が流れ始めているからだ。
IMFとの長時間に渡る交渉の結果、120億ドルの貸し付けが決まったし、アフリカ開発銀行からも、40億ドル程度だったと思うが、資金が流入して来ることが決まっている、ヨーロッパからも同様の、資金の流入が決まっている。
サウジアラビアとの関係は悪化したが、だからといって、アラブ湾岸諸国全体との関係が、悪くなったわけではない。これらの国からも、資金は流れてこよう。アラブ湾岸諸国は押しなべて、イランの軍事的脅威を、感じているのだ。その事に対する安全弁となるのが、エジプトの軍事力であろう。
問題は、エジプト政府がテロの活動を、押さえられるか、否かであろう。そこは軍出身の、シーシ大統領の本領発揮を、待つということになろう。
:リビア
リビアにIS(ISIL)が入り込んだために、それまで部族、地域、宗派間で生じていた、国内対立と戦闘に輪がかかり、リビアは混乱状態が続いていた。なかでも、カダフィ大佐の出身地とされる、シルテではIS(ISIL)の存在が、大きな問題になっていた。
しかし、イギリス、フランス、イタリア3国が、リビア問題の解決に乗り出し、加えて、アメリカが動き出したことで、相当状況は改善した。
残る問題は、リビアの東西政府が、どう妥協を生み出すかであろう。
:トルコ
大型テロが続いたトルコの2016年は、最悪の年であったろう。加えて、テロが頻発するために、外人観光客の足は遠のき、外貨収入も激減した。
ロシア機の撃墜事件などがあり、ロシア人観光客の足にストップがかかり、トルコの農産品の輸出も、大幅にブレーキがかかった年だった。
それでは2017年はといえば、IS(ISIL)のテロリストが、シリアやイラクでは持ちこたえられなくなり、トルコに流入して来よう。エルドアン大統領が多数の有能な警官や、検察官、情報部員を首にしたことで、テロ対策は十分には取れていない。
このためクルドのPKKも、テロ活動を活発化させていこう。加えて、トルコの極左テロ集団も動こう。こうなると2017年はトルコにとって、最悪の年になるのではないか。最近になって、多くのトルコ人たちは『トルコは分裂するのではないか』『トルコが内戦状態になるのではないか』という強い懸念を、抱くようになっている。
経済の悪化は歯止めが利かず、エルドアン大統領が叫んだ『外貨をトルコ・リラに替えろ』という経済対策の結果もむなしく、遂にトルコ・リラは1ドルに対して、3・5リラ台に突入している。(つい最近までは2・98リラ程度だった)
トルコは2017年経済の悪化、テロの多発、対外関係の悪化など、難問山積の年となろう。
:サウジアラビア
IS(ISIL)はサウジアラビアを、今後のターゲットにする、と宣言している。欧米のシンクタンクも、やはりサウジアラビアが、危険な段階に入っていこう、という予測をしている。
日本ではほとんど報じられないが、大小幾つものテロが、サウジアラビア国内では、起こっているのだ。それが、IS(ISIL)がシリアやイラクという、拠点を失った関係で、サウジアラビアに流入することになり、もっと悪化するということが、予測されるのだ。
述べるまでも無く、サウジアラビアの治安部や警察には、テロリストを取りしまるに、十分な能力は無い。サウジアラビアの治安は、結局のところ、アメリカやイギリスに、頼るしかあるまい。
そうなると、アメリカやイギリスが、サウジアラビアの王家を、どう考えるかによって、今後の治安状況が決まることになろう。加えて、経済状態も悪化している。今までは考えもしなかった、サウジアラビアの大手企業の給与未払い問題は、国際問題にまで発展しているのだ。
結局は石油収入以外に、収入源が無いことの弱みであろう。ムハンマド副皇太子が石油離れの、経済発展を提唱しているが、そんなことが出来るとは思えない。2017年のサウジアラビアは、極めて不安定な状態に、陥っていくのではないか。
:イラン
イランはアメリカによる経済制裁が、解除されないために、今年も厳しい展開となろう。しかし、ヨーロッパ各国はイランとの、経済協力を進めているので、早晩アメリカも乗り出さざるを、得なくなろう。
アメリカのイラン対応のシグナルは、ボーイング機の取引を見ていたら、分かるのではないか。つい昨日も、『イラン機が不時着』というニュースが流れていたが、イランにある旅客機の多くは、大分古くなっており、飛んでいるのが不思議なくらいだ。
イランはヨーロッパ製のエアバスもさることながら、本音はアメリカのボーイング機が、買いたいのだ。イラン人の間のアメリカ信仰は、それほど強いのだ。アメリカもそれを無視して、ヨーロッパに旅客機輸出を、独占させたくは無かろう。
加えて、サウジアラビアの国内状況が悪化し、石油輸出に懸念がもたれるようになれば、イランの持つ増産の能力は、再評価されることになろう。