トルコでは毎日のように、悲劇的な出来事が起こっている。つい最近は、トルコ第二の都市イスタンブールで、テロ事件が起こり、多数の死傷者が出ている。
今度はトルコの中部の街カイセリ市で、軍人を乗せたバスが、テロのターゲットとなり、やはり多数の死傷者が出た。バスに乗っていたのは、仕事を終えて帰宅する(宿舎に帰る)軍人がほとんどで、一部民間人(軍属のスタッフだったと思われる)も含まれていた。
当初は、13人程度が死亡し、40人弱が負傷した、と伝えられていたが、その後、死者数は増えており、正確な人数は分からない、ということのようだ。また負傷者にしても然りで、現段階では55人と報告されている。
エルドアン大統領はこのテロについて『イラクやシリアと関連するものであり、独自のものではない。』と発言しているが、それはクルド人(PKK)によるイラク・シリアでの、トルコ軍のクルド人に対する攻撃への報復、という意味であろうか。
トルコはアメリカの要請に応えて、イラクやシリアでIS(ISIL)掃討作戦に、参加しているが、トルコ軍の主な攻撃対象は、実はIS(ISIL)ではなく、クルド人であり、シリアのクルド組織YPGや、トルコのクルド・テロ組織PKKなのだ。
トルコ政府にしてみれば、シリアの内戦を通じて、シリアのクルド人がシリア北部を占領支配し、そこが自治区になることは悪夢であろう。もしそうなれば、シリアのクルド自治区がトルコのクルド組織PKKへの、シェルターになる可能性が、高いからだ。
そしてトルコ、シリア、イラクのクルド人たちは、統一してクルド国家を、創る可能性があるからだ。そうなれば、トルオ国内のクルド勢力の勢いは増し、遂にはトルコ東部の地域が、クルド人たちによって、奪取される危険性があろう。
こうした事情が、トルコをしてイラク・シリアで、クルド掃討作戦を取らせているのだが、その結果は、トルコ国内でPKKや、その他のクルド人のテロを増やすことに、繋がるのだ。
トルコ政府としては、クルドを攻撃すればテロが増え、攻撃を控えてもやはりテロが止まない、という状況になっており、他の選択肢は無いということだ。そもそも、ここまでトルコとクルドの関係が悪化したのは、2013年の選挙以来のことで、トルコのクルド政党HDPが選挙で、勝利した結果によるものであろう。
以来、エルドアン大統領はクルドとの、妥協政策を撤回している。最近ではトルコのクルド政党HDPの幹部が、逮捕され投獄されているのだ。そして今回のカイセリ市のバス・テロの後、カイセリ市のHDPの事務所が、トルコ市民によって襲撃され、放火され、内部から備品などが投げ出される、という出来事が起こっている。
それだけトルコ国民の怒りは、頂点に達している、ということであろう。どうもトルコのクルド問題は、拡大していく可能性はあるが、解決に向かう気配は無さそうだ。