『悪夢の週末・カイロとイスタンブール』

2016年12月12日

 

 先週末は、まさに悪夢の週末であった。週末と聞けば、親子が公園に遊びに行ったり、ショッピングを楽しんだりと、家族だんらんの時間が、過ごせるはずなのだが,先週はこれとは全く異なる、様相を見せた。

 イスタンブールでは人気のある、ベシクタシュ・サッカー・チームの競技場そばで、車爆弾が爆発し、多くの警官と市民が犠牲になっている。このテロは後にPKKが犯行声明を出しているが、警官を狙ったものだったようだ。

 死者は38人、負傷者は155人というのだから、大変な数であり、爆発の規模も、相当なものであったろう。近くの住民は、地震ではないかと思った、と語っているが、それほどすごい揺れであったのであろう。

 同様に、エジプトのカイロでは、コプト・キリスト教会が、爆弾テロに遭っている。これも犠牲者数は60人以上に上る、と見られている。コプト教会はこれまで何度となく、テロに遭っているが、それは、エジプトが抱える人口構成に、問題があるのであろう。

コプト・キリスト教徒側はマイノリテイの弱さから、何時も被害を受ける側に、回っているのだ。エジプトではこれ以外に、警官を狙ったとみられるテロが、ピラミッドに向かう、ギザの通りで起こっており、6人の警官が犠牲になっている。

イエメンではIS(ISIL)によるとされる、テロがアデン市で起こり、50人のイエメン人が、犠牲になっている。こうしてみると、先週はまさに悪魔の微笑みかけるような、1週間であったという事であろうか。

何故こうしたテロが、いま中東諸国では、頻発しているのであろうか。トルコの場合はエルドアン大統領の強硬政治が敵を増やし、クルドのPKKなどが反発してテロを起こしているし、IS(ISIL)もしかりだ。

そうしたなかで、エルドアン大統領は政敵だ、と自分で思い込んでいる、ギュレン派と目される警官や治安要員、検察官を大量の首にし、投獄した結果、治安部門のエキスパートが、不足したために、十分な対応が取れていない、ということだ。

エジプトの場合は経済の悪化が、庶民の間に不満を募らせ、その不満がマイノリテイのコプトに向かう、という事のようだ。最近、シーシ大統領はモスクのイマーム(礼拝の先導者)の、演説をチェックしたり、政府の方針に沿った演説ドラフトを、渡したりしているが、なかなかその効果は生まれず、過激な思想がイスラム教徒の間で、広まっているようだ。

エジプトの経済の改善は、観光収入に大きく依存しているのだが、テロの頻発は観光客を激減させ、外国の援助にすがるしかなく、湾岸諸国やアメリカにすり寄っている。しかし、これらの諸国の台所事情も、決していい状態ではなく、なかなか資金は、エジプトに流入して来ていないようだ。

当分の間、中東全域は危険信号が灯り続ける、という事であろう。

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