『シリアのアサド大勝利を喜ぶ・その後は?』

2016年12月 8日

 

 シリアの最大の戦闘地アレッポは、ついにシリア政府軍によって、奪還されたようだ。ただし、解放地域はアレッポ全体の、3分の2だということなので、完全解放には、まだ少し時間がかかろう。

いずれにしろ、もはや数日、あるいは数週間で、完全解放される見通しであり、シリア軍側の勝利は間違いない、ということだ。その結果を前に、シリアのアサド大統領は、大喜びしているようだ。それはそうであろう、オバマ大統領はアサド体制を打倒する、と宣言していたのだから。

シリアのアレッポ陥落の前には、ケリー国務長官がロシア側に対して、何とか最終的には、政治的な解決に持ち込みたい、と懇願していた。シリアの戦闘を停戦に持ち込み、政治交渉でアメリカの支援する、レベル側にも何らかの褒賞を、与えたいと願ったのだ。

しかし、ロシアはそれを全く受け付けなかった。それは当然であろう。これまでもロシアがアメリカの主張する、停戦を受け入れるたびに、アメリカは反政府側に武器を供与し、有利な状況を作ってきたからだ。

アメリカは信用できない、というのがロシアの立場であり、シリア政府もしかりであったろう。アサド大統領はアレッポの勝利について、『アメリカとトルコは支援する側の敗北で、全てを失った。』と語っている。そのトルコもまた、つい最近、ダマスカスに政府代表団を送り込み、少しでも有利な状況を引き出そうとしていたが、全く相手にされなかったのであろう。

アサド大統領は勝利の喜びのなかでも、冷静に状況を判断している。彼は『アレッポの勝利は戦争の終わりではない。』と語っている。また,停戦については『ミリタント側との停戦はありえない。』と全面否定し、『アメリカは支援者たちの敗北で、苦しい立場に追い込まれている。すでにアメリカはシリアに関する、全てのカードを失った。』とも語っている。

アサド大統領は『アレッポはミリタントと、その支援者たちにとって、最後の橋頭保であった。だが敗北した。ミリタント側は既に、ダマスカスでもホムスでも、敗北しているのだ。』と語った。トルコもアレッポのミリタントに対して、全面支援していたのだが、失敗に終わった。

このアレッポの勝利を、ロシアは大喜びしているであろう。アメリカは自国が支援する、ミリタントが使用した化学兵器を、シリアが使用したと語り、自国がシリアの学校や病院などの施設に対して、空爆した後、ロシアかシリア軍がやった、と非難してきていた。

最近では、アメリカの攻撃によって、ロシアの軍事顧問が死亡し、病院で人道支援を行っていた、ロシア人医師看護婦なども、犠牲になっている。プーチン大統領はこうした事実を前に、安易なアメリカへの妥協を、するとは思えない。