トルコのエルドアン大統領は国民に対して、手持ちのドルを始めとした外貨を、トルコ・リラに替えろと、何度も呼びかけている。そこまでトルコの外貨事情は、悪化しているということだ。
このエルドアン大統領の呼びかけに応え、多くの愛国心に満ちたトルコ国民は、銀行へ向かい、ドルをトルコ・リラに両替している。その両替した書類を提示すれば、レストランで豪華な食事がタダになったり、魚屋からは魚がもらえたりという、恩恵に浴すことができる。
そればかりか、墓石をただで提供する、と言い出した墓石業者もいるくらいだ。つまり、ドルを両替して愛国心を示そう、というイベントは、トルコではお祭り騒ぎに、なっているのだ。それは、両替証明が将来の安全の証書に、代わる可能性がある、という期待と不安からであろうか。
この国民的盛り上がりのなかで、CHP党首のクルチダウール氏は、実に愉快なというか、すっきりした発言をした。それは、エルドアン大統領に対して『貴方は持てる大量のドルを、両替したんですか。政治家は持てる財産を、公表すべきでしょう。』と切り込んだのだ。
これに対して、エルドアン大統領は議会で、自分も両替した。両替の証書はあると言ったのだが,その証書を具体的には見せていないようだ。エルドアン大統領がこれまで取りまくった、賄賂の総額は、400億ドルにも上る、といわれている。
現在の、トルコの外貨事情の悪化の一因は、ここにあるのだ.外国から金を借りまくり、メガ・プロジェクトを進め、国家は大借金を抱えることなった。そのメガ・プロジェクトで業者から、賄賂を取りまくったのは、エルドアン大統領であり、責任の多くは彼にあるのだ。
今では石油やガスの輸入に、ドルが必要なことは、述べるまでもないが、ショッピング・モールの家賃までもが、ドルで決済されているのだ.つまり、トルコ・リラは国民の間で、信用されなくなっている、ということだ。
それは、極めて当然であろう。デノミ後のトルコ・リラのレートは、1ドルに対して、1・6リラだったものが、今では3・7リラ以下に下がっているのだ。しかも、今後、トルコ・リラは、1ドルに対して4リラまで、下がるだろう、あるいは、5リラまで下がる、という見通しが、金融関係者の間で、ささやかれているのだ。
エルドアン大統領は自分だけは、ドルを隠し持ち、国民には紙くずに変わる、トルコ・リラに替えろ、という事であろうか。
最近『大統領閣下あなたの靴箱に隠しているドルは、トルコ・リラに替えましたか!!』という冗談がトルコでは流行っているそうだ。述べるまでもなく、靴箱に隠されているドルとは、2014年に汚職が発覚したとき、エルドアン大統領と子息との間で交わされた、秘密の電話の内容が盗聴され、公になったものを、もじったものだ。