『イラク軍ペシュメルガ側の犠牲者拡大のイラク戦線』

2016年12月 2日

 イラクでのISとイラク軍、ペシュメルガ軍との戦いは、激しさを増しているようだ。それは、イラク政府が最後の追い込みに入り、IS(ISIL)は間もなく敗北する、という読みからであろうか。イラクのアバデイ首相は、イラク軍側が1か月以内で、IS(ISIL)に勝利する、と語っている。

 そのために、イラク軍側には相当犠牲者が、出ているようだ。もちろん、IS(ISIL)側にも犠牲者は多数出ている。イラク政府の発表によれば、イラク治安軍の将兵1950人が、11月中に死亡した、ということだ。それは10月の犠牲者数の、3倍にあたるというのだから、犠牲者数は激増ということであろう。

 そのことは市民の間にも、犠牲者が多数出ている、ということではないのか。

 他方、北イラクを統治している、クルド政府軍ペシュメルガも、同様に多数の犠牲者を、出しているようだ。ペシュメルガの発表によれば、同軍の犠牲者数は、2014年以来1600人にも達している、という事のようだ。ただし、このクルドの犠牲者数は、2014年以来ということであり、イラク軍の11月の犠牲者数、1950人に比べれば、少ないという事であろう。

  イラク軍によるモースルの、IS(ISIL)に対する攻勢は、激化しているが、アバデイ首相が言うように、これから1か月、あるいは3か月で、IS(ISIL)を打倒できるのであろうか。この点については、異論を述べる専門家も少なくはない、彼らに言わせると、IS(ISIL)が打倒されるまでには、1年はかかるだろうということだ。

 いずれにしろ、ISISIL)は相当追い込まれている、という事であろう。IS(ISIL)が窮地に立っているという事は、シリアでも同じであり、シリアのアサド大統領も、非常に近い将来、IS(ISIL)は敗北する、と語っている。

 ここに来て、イラクもシリアも口をそろえたように、IS(ISIL)の敗北を語っているという事は、これまでIS(ISIL)が考えていたような、IS(ISIL)の戦闘員がイラクとシリアとの間で、自由に移動でき、どちらかが不利になったときは、戦闘員を送るということが、不可能になったことによるのではないのか。

 これまでよく言われていたのはイラクのモースルからIS(ISIL)の戦闘員がシリアのラッカに逃亡し、そこで戦闘を継続すると言われていたが、すでにモースル・ラッカ街道は政府軍側によって支配され、移動は困難になっている。加えて、ラッカはシリア軍によって、ほぼ陥落されてもいる。あとは時間の問題であろう。