12月28日に、エジプトのシーシ大統領が、イスマイリヤとポートサイドの、産業施設開所式で演説した。その中で彼は思い切った、希望的予測を公表している。
シーシ大統領は今後6か月で、エジプト経済は大幅に改善される、と語ったのだ。彼はこの演説のなかで『エジプト国民は通貨の自由化を受け入れ、インフレに耐え、厳しい状況に耐え抜いた。これは、国民が個人の利益よりも、国全体の利益を、優先してくれたからだ。』と語った。
エジプトの経済がグレーなのは、実は官僚の汚職が、多いことに起因している。ある国家の調達責任者は、家宅捜査を受けたところ、巨額のエジプト・ポンドと外貨が出てきているし、彼の家には金製品など貴金属が沢山あり、土地や不動産の権利書も見つかっている。
これは一例に過ぎない。多くの高級公務員が、賄賂を受け取ることを、当然の権利のように考えている。賄賂や心付けをアラビア語では、バクシーシというのだが、エジプトではカラミーヤ(思いやりとか親切といった意味)という言葉を、使うようになっている。バクシーシでは体裁が、悪かったからであろうか。
さて、シーシ大統領は何を根拠に、エジプトの経済が来年半ばから、好転すると語ったのであろうか。そこにはそれなりの根拠があるのだ。現在、エジプトにはヨーロッパ、アフリカ、世銀などから、貸付が集中しており、サウジアラビアとの関係は疎遠になったが、外貨は流れ込んでいるのだ。
加えて、エジプト政府と外国企業が、石油やガスの探査に合意している。その地域はスエズ湾、地中海、西砂漠(リビアとの国境に近い地域)、上エジプト(ナイルデルタ地帯)などとなっている。現在既に、BP、エクソン、ENIなどが、エジプトに進出しているが、その中の何社かはガスなどを掘り当て、採算ラインに達しているのだ。
エジプトの通貨がフローテイング・レートになったことで、対ドル8・5ポンド程度であったものが、現在では18ポンド程度にまで下がっている。このためエジプトへの投資が、割安になった、という事であろうか。
トランプ氏は大統領就任後、テロリストへの支援はしない、と言い出しているが、そのことはシリアやイラクだけではなく、エジプトのテロも沈静化する、という事であろう。そうなれば、これまでと同様に、多数の観光客がエジプトを、訪問することになろう。
こうしてみると、シーシ大統領が語った、エジプトの明るい2017年は、まんざら大ぼらではない、ということになるが、現実がどうなるのかは、もう少ししたら明らかになろう。