エジプトのシーシ大統領が、まさに清水の舞台から飛び降りるような、大決断をしたのではないか、と思われる。あるいは、そこまでエジプトとサウジアラビアとの関係が、こじれているのかもしれない。
これはシリアをめぐって、明らかになってきたものだ。述べるまでもなく、シリアのアサド体制を、一日でも早く打倒したい、と考えているのがサウジアラビアだ。それはシリアのアサド体制が、シーア派の分派である、アラウイ教徒だからだ。
サウジアラビアにしてみれば、北はイラン、北西はイラク、そして西にシリアがあり、南東部にはイエメンのホウシ派が、控えているのだ。加えて、レバノンのヘズブラもシーア派であり、四方をシーア派に囲まれているという状況にあるのだ。
これまで、そのためにサウジアラビアは、シリアの反体制派を支援していたが、そのことに費やされた費用は、莫大なものになっているのではなかろうか。武器、資金、情報をサウジアラビアはシリアの反体制派に送り、それをトルコと連携して、やっていたのだ。
従って、サウジアラビアの反アサド体制支援に、どう対応するのかという事が、サウジアラビアと相手国との関係を、推測するうえで重要な要素となっていた。トルコの場合は、サウジアラビアの意向と合致するものであり、ヨルダンもしかりであろう。
エジプトはこれまで、苦しい財政状況のなかで、何とかやってこられたのは、サウジアラビアからの、巨額な援助があったからだ。従って、シリア問題を巡ってエジプトはサウジアラビアの意向に沿って、行動すると思われてきた。
ところが、ここに来てエジプトのシーシ大統領は、全く逆の方向に、舵を切ったのだ。シーシ大統領はシリア政府を、支援する意向を示した。それは述べるまでもなく、サウジアラビアと対立する立場なのだ。
結果的に、エジプトはサウジアラビアからの援助を、期待出来なくなり、経済状況はますます、悪化していくことになろう。唯一の頼みの綱は、IMFからの借り入れであろう、と思われる。現在の段階では、エジプトとIMFとの間では、120億ドルの借款が締結されている。
エジプトはIMFの方針に則って、国家を運営し、外国の援助は断る、という事であろうか。エジプトのシーシ大統領は『我々はアラブ各国の国軍を尊重する、シリアへの支援もリビアへの支援の場合もそうだ。』と語っている。
ここでシーシ大統領が言う国軍とは、あくまでも国軍であり、反アサドのミリシアのことではないのだ。エジプトは果たしてこれで、やって行けるのだろうか、という疑問が沸いてくるのだが。
同時に、このことは、アメリカやヨーロッパとの関係にも、影響して来よう。アメリカやヨーロッパは、サウジアラビアの王政を打倒し、エジプトを正常な国家運営のできる国に、導いていくというのであろうか。IMFはその場合欧米の、先兵ということになるのだろうか。