『経済で崩壊するスルタネイト・オブ・エルドアン』

2016年11月19日

 

 オスマン帝国が崩壊したのは、第一次世界大戦の結果だったが、そもそも、オスマン帝国が崩壊していく過程には、経済の破綻があったということだ。明治時代に日本に送られた、オスマン帝国の艦艇は、老朽化したものを修理して、日本に差し向けられたといわれている。

つまり、オスマン帝国が派遣し、訪日した艦船エルトールル号は、既に何時壊れても、不思議のない老朽船であり、それが台風で座礁した、ということだったようだ。その後、日本とトルコとの合作で、『海難1890』という映画が製作されたが、舞台裏を見ると、相当酷い話だった、ということであろう。

オスマン帝国の終焉と同じように、エルドアン皇帝の最後も、どうやら経済的崩壊によるもの、と思われる。エルドアン大統領はネオ・オスマン帝国の、皇帝になることを夢見て、トルコ共和国第一代大統領ケマル・アタチュルクを誹謗する、言動を繰り返してきていた。

エルドアン大統領はオスマン帝国が、連合軍側と交わしたセーブル条約こそが正当であり、ケマル・アタチュルク大統領が交わした、ローザンヌ条約は認めない、とも語っている。それはローザンヌ条約が交わされた結果、トルコが多くの領土を、失ったからだった。

その失なわれた領土を、奪還することを目的に、エルドアン大統領はシリアやイラクに、軍を送り始めている。いまのところ、大半の軍は国境におり、大規模な軍隊は、シリアにもイラクにも、進攻していないが、軍を移動したり駐留することだけでも、かかる経費は莫大なものであろう。

シリア・イラクへの、軍事的領土奪還への野望は、トルコに相当の財政負担を、生み出していることであろう。加えて、世界は景気後退期にあり、トルコの貿易には、明るい見通しが立っていない。ロシアやシリア、イラクといった近隣諸国とも、経済関係は死に体にある。

IS(ISIL)PKKとの敵対関係が、かの組織のトルコに対する、テロを激化させており、トルコは観光収入が見込めなくなってもいる。これではトルコの経済が、改善していくことは、夢のまた夢であろう。

このところ、トルコ・リラが急激に下がり、対ドルでは3・41リラに達している。このことは、トルコが強度のインフレに、見舞われるのは、時間の問題であり、その結果企業は弱体化し、失業が増加し、庶民の生活は窮迫し、政府非難の声が高くなる、ということであろう。

エルドアン大統領は政府に、経済支援策を進めろ、とわめきたてているが,彼にはさしたる対応策もなく、ギュレン派やPKKに対する、非難を繰り返し、ドイツやベルギーが、PKKを背後で支援している、と非難する始末だ。

トルコの中央銀行もどうやら、打つ手がないようだ。トルコ・リラの値下がりは今後も進み、トルコ人たちは1ドルに対して、4リラまで下がるだろう、と言い始めている。外国の投資家たちがトルコ・リラ売りを、浴びせかければ1ドルに対し、4リラ説もそう遠くなく、現実のものになるだろう。

経済がその国に微笑みかけたときは国を栄えさせる反面、経済画は独裁敵意の眼差しをその国に向けたときは、どんな独裁体制でも打ち倒せる、強大な魔物に化けるのだ。その意味で、クーデターは体制側にとって、真の敵ではないのだ。