イスラム世界へ旅行をすると、早朝のアザーンの声が聞こえてきて、異国情緒を味わえる。アザーンとはイスラム教徒に、礼拝の時を伝えるものであり、礼拝を奨励する呼びかけなのだ。
ところが、パレスチナ人と隣り合わせに住むユダヤ人には、それが騒音であり、安眠の邪魔だというのだ。不満を言うだけではなく、遂にイスラエルの議会クネセトにかけて、アザーン禁止令を敷くように動き出したのだ。
このアザーン反対運動は、テルアビブのベングリオン空港がある、ロッド市で始まったのだが、この街は人口が73000人だが、ユダヤ人に対し、街の3分の1の人口がアラブ人(パレスチナ人)であることが、問題なのだ。
ユダヤ人からすれば、あまりにも多いアラブ人が、何時も顔を合わせる環境なだけに、不安と不快と恐怖心が、大きいのではないかと思われる。アザーンはとってつけた理由であり、第一義ではないだろう。
イスラエル政府はアザーンの、ラウド・スピーカー使用を禁止するとか、アザーン禁止は朝の礼拝だけにするとか、対応策を考えているようだ。しかし、イスラム教徒側に言わせれば、アザーンはイスラム教のシンボルであり、譲れないということになる。これはムアッジン(アザーンを唱える人)の頬を打つようなものだ、と非難している。
当然、イスラム教の国ヨルダンとパレスチナ自治政府が、このことでイスラエル政府に噛み付いている。面白いことに、ウルトラ・ユダヤ教徒側からも、文句が出ている。それはガザなどからの、ロケット弾攻撃時に鳴らすサイレンや、ユダヤ教徒が過ごすシャバトを知らせる、アナウンスもダメになる、という事かというのだ。もし、ユダヤ人だけが認められるのであれば、ユダヤの法の公平の原則に、合致しなくなるからだ。
アラブ人は『これはアラブ嫌いが言わせたことだ。』『イスラム教に反対の人たちの意見だ。』と反対している。
もう一つ、ユダヤ人とアラブ人の間では、問題が起きている。それはイスラエル国内での、アラビア語使用をめぐる問題だ。イスラエルで人気の高い、ハイファにある『カフェ』という喫茶店のチェーンがあるが、そこのアラブ人従業員に対して、店ではキッチンを含めて、アラビア語を使ってはいけない、というお達しを出したのだ。
アラブ人従業員はユダヤ人に対しては、ヘブライ語を使うことに反対しないが、キッチンで皿を洗っているアラブ人のなかには、ヘブライ語ができない人が多くいるので、不都合だというのだ。
この問題を巡っては、機会均等法に抵触する、と反対が起きている。カフェ喫茶店があるハイファでこの問題が起こったことは、極めて深刻だとみる人たちが、少なくない。ハイファはアラブとユダヤが、うまく共存してきていた街だからだ。