『見え始めてきたか・トランプの中東対応』

2016年11月13日

 

 第45代アメリカ大統領に、選挙で選ばれたトランプ氏が、どのような国際政治をやるのか、ということが世界中で注目されている。なかでも、中東諸国はアメリカの影響が、一番顕著な地域であるため、真剣にトランプ分析を、していることであろう。

この時期に思い切って、トランプ氏がどのような中東対応をするのかを、考えてみたので書こうと思う。

 

:エジプト

 エジプトはイスラエルの、安全保障の最前線に、位置する国家だ。この国抜きには、アラブのイスラエル戦争はありえない。同時に、エジプト抜きには、イスラエルとアラブとの、共存もありえまい。いまのところ、エジプトのシーシ大統領は、イスラエルと良好な関係を、維持してもいる。

 エジプトは現在の大統領が、軍人の出身であることから、論理は分かり易く、アメリカとの対話はスムーズに、行くのではないか。グローバリズムに関心のあったヒラリー候補とは異なり、中東を破壊するという考えは、トランプ氏にはあるまい。従ってエジプトは安定期に入るのではないか。

 

:リビア

 リビアにIS(ISIL)が侵入し、破壊工作を始めたのは、アメリカがリビアそのものと、アフリカを狙っていたためであろう。カダフィのアフリカ通貨を破壊することも、その目的であったと思われる。

 しかし、いまはアメリカが国内固めの時期であり、アフリカで大規模な侵攻作戦を、行うとは思えない。従って、リビアのIS(ISIL)に対する支援も、停止状態に入り、リビアは安定に向かうのではないか、と思われる。

 アメリカは裏から、東リビア政府のハフタルを支えてきたが、それも終わりに近づき、統一政府のセラジ政権か、他の統一政府が誕生し、安定化していくのではないか。ハンマーで殴って言うことを聞かせるのではなく、トランプ氏はリビアを安定させることにより、利益を確保しよう、と考えるのではないか。

 

:サウジアラビア

 サウジアラビアはアメリカの尖兵として、アラブ諸国の反体制派に、資金提供して来た国だ。しかし、いまとなっては、アメリカにはそうした考えが、無くなってきているので、サウジアラビアに対する評価は、下がるだろう。

 逆に、サウジアラビアの国内では、反政府の動きが強まっていくのではないか。アメリカはサウジアラビアの国内治安維持に、積極的には協力しなくなるからだ。

 加えて石油価格の低迷が、今後も進み、場合によってはかつての120ドル・バーレルの時代は夢となり、1バーレルの価格が20ドル台まで、落ち込むかもしれない。その事は国民への福祉もままならず、政治的には不安定になっていく、要素となろう。

 

:トルコ

 トルコはエルドアン大統領の過激な発言が、いままで許されてきていた。それはトルコの地理的条件や、国内のインジルリク空軍基地が、アメリカやNATOにとって、利便性があったからであろう。

しかし、アメリカはアラブの混乱状態から、手を引くであろうから、トルコの戦略的価値に対する評価は、下がっていこう。それと反比例して、エルドアン大統領の独裁、非民主的な手法、傲慢な言動に、アメリカは不快感を、示していくのではないか。

 

:イラン

 イランとアメリカとの間には、核問題をめぐり、相互に不信感が横たわってきていた。しかし、これからは核問題は棚上げされ、ビジネス関係が強まっていくのではないか。

 イランの持つ潜在的な価値は大きい。石油ガス資源がそれであろうし、中央アジアからの石油ガスの、通過ルートとしてもイランの価値は高い。加えて、40年近くアメリカに放置されてきたため、イランは大きな復旧のニーズを抱えており、アメリカ企業にはビジネスチャンスが、山積しているということだ。

 

 この考えは極めてラフなものであり、楽観的なものであろう。いま懸念されることは、ドラステイックなアメリカの、対アラブ対策の発動ではなく、アメリカの国内の状況ではないか、と思われる。つまり、アメリカは安定していくのか、あるいは反トランプの嵐が拡大し、アメリカを分裂させていくのか、ということだ。