『トルコの嫌な話と間抜けな話』

2016年11月12日

 

 インターネットを開くと、トルコに関するニュースが、毎日多いことに驚く。それはエルドアン大統領が、特異な人物であることによろう。彼の言動は無責任な受け止め方をすると、これほど面白いことは無い。ある意味ではアメリカのトランプ氏を、はるかに凌駕しているかもしれない。

 しかし、彼の統治下で暮らす、トルコの国民にとっては、冗談では済まされないだろう。ある日突然、家族や親族が逮捕され、クーデター未遂事件に関与していた、として刑務所に放り込まれるのだ。そこでは拷問が、待っているといわれている。

 アチカルンという技師がいた。いたという過去形を使ったのは、彼はすでに他界してしまったからだ。死因は自殺という事だが、真偽のほどはわからない。彼は715日に起こったクーデター未遂事件に、関与していたという事で逮捕され、クルッカル刑務所に収監されていた。そこで彼は自殺したということだ。

 彼にはクーデター関与だけではなく、ほかの嫌疑もかけられていた。それは彼がフアト・アウニに、情報を流していたということだ。このフアト・アウニなる人物は、もちろん偽名だが、政府中枢の情報や、エルドアン大統領の動向を、ツイッターで流していた人物だ。

 そのツイッター情報があまりにも正確なために、この人物は政府の中枢にいるのだろう

と、いわれていた。彼はトルコでは顔の見えない、大人気者になっている。

 この記事の中には書かれていないが、あるいはアチカルン氏の自殺を流したのは、フアト・アウニ氏かも知れない。そしてこのニュースと同時に、これまでにクーデター未遂事件で、逮捕された人たちのなかから、21人の自殺者が出ているということだ。またこれとは別に、殺害された人たちも少なくないようだ。

 もう一つの間抜けなニュースというのは、これもやはりクーデターがらみなのだが、クーデターに関与しているという容疑で、逮捕されたり、免職されたトルコ空軍のパイロットの数は、350人にも達していたようだ。

 その結果、イラクやシリアでの戦闘が、展開される状況のなかで、トルコ空軍はパイロットの数が足りなくなったのだ。そこで政府はこれらのパイロットを、呼び戻して軍で働かせたいという考えなのだが、どうも思うように戻って来ては、くれていないようだ。

 空軍を離れたパイロットたちは、民間航空会社のパイロットとして再就職している者が少なく無くないようだ。空軍でのサラリーは3200ドル相当だが、民間のサラリーはそれよりも、いいことは明らかであろう。しかも民間機なら、撃ち落される心配はない。

 政府は空軍パイロットの不足、深刻に受け止めて、必死で復帰してくれるよう呼びかけている、という事のようだ。しかし、この話は何となく、間抜けな話に聞こえるのだが。