だが、ここに来て、その進展の可能性が、見え始めてきている。それは、キプロス問題がどうやら、進展し、統一国家に向かう可能性が、高くなってきたこと、トルコとイスラエルとの関係が、改善してきたこと、などによろう。
キプロス問題とは同島が南北に二分され、ギリシャ寄りの国と、北側のトルコ寄りの国に二分割されてきていた。しかし、島そのものが小さいこと、これと言った資源も無いことなどから、国際的にはあまり、重要視されてこなかったために、ある種の放置状態が、続いてきていたのであろう。
だが、同島の周辺には、海底に大量のガスが、眠っていることが明らかになり、その資源はトルコとまたがっていることなどから、キプロス・トルコ関係を改善し、開発に向かおうという、前向きな考え方が、両国で拡大してきていた。
そうした事情が、キプロスの南北統一の話を、実現する方向に、向かわせているのであろう。
イスラエルもしかりで、トルコとの関係を、改善することにより、パレスチナ問題を進展させ、シリアへの関与を期待し、東地中海海域のガス開発を、トルコと進めたいという事であろう。
イスラエルの持ち分は、パレスチナともまたがっており、早急に何らかの解決策が、必要なのだ。イスラエルは力でパレスチナを抑え込み、ガス資源を独占したいところであろうが、そういう方向に動けば、世界から非難されることになろう。
こうした環境の整備ができたことを背景に、アメリカのグローバル・エナジー・センターのリチャード・モーニングスター氏が、東地中海のガス開発について、希望的意見を述べたものと思われる。
問題は、この莫大な資源をめぐって、今後、関係諸国が奪い合いにならないか、という事だ。そのためには大国の関与が、必要なのかもしれない(大国が強引に関与してくる)。また、アメリカのシェール・エネルギーとの価格問題も、考慮しなければなるまい。
大量のガスが開発されるという事は、将来、ガス・石油の国際市場価格は、下がることがあっても、上がることはあるまい。あるいは誰かが予測していたように、石油で言うと、1バーレル当たり20ドル前後、という価格が、定着していくかもしれない。
そうしたことは、日本には好都合なことであろう。ロシアとの交渉でも、足元を見られるのはロシア側であり、日本ではなくなろう。要は情報を早く入手し、国際政治で活用するという、柔軟で敏速な思考を、持つことだ。