エジプト政府は自国通貨を、フローテングにすることを決定した。それは大きな博打であろう、と思われる。そうでなくとも、弱いエジプトの通過ポンドという子船が、フローテングになった場合、世界経済の荒波に、投げ出されるということだ。
以前からエジプト・ポンドはドルに対して下げていたが、 フローテングになった途端に大幅な下落を記録した。それまでは公定レートがドルに対して8.8ポンド前後であり、闇レートは13ポンド前後であった。
それがフロ―テングになると、たちまち18・4ポンドまで下げた。さすがにその後持ち直し、17・5ポンドとなり、15・25ポンドに戻している。それでも専門家などが見ている、妥当なレートとされる、13・5ポンドよりも低いのだ。
政府は公定レートを9ポンド程度にし、闇レートを13ポンドにしたかったようだ。この大幅なエジプト・ポンドの値下がりを、生み出したのは何か、という疑問が沸いて来る。
実はエジプト政府が自国通貨の、フローテング制にした裏には、強いIMFの圧力があったからだ。IMFは弱いエジプトの経済状態を改善するために、120億ドルの借款を供与することを決めたが、その条件はフローテングにすることだったようだ。
欧米は今回の、エジプト政府の決断を称賛し、歓迎しているが、エジプト国民、なかでも貧困層や中産階級には、毒酒をあおるような、ものではないのか。自国通貨が弱くなるという事は、当然、輸入物価が上がり、それは食料などの輸入を、余儀なくされているエジプトでは、国民全体に影響を、及ぼすことになる。
エジプトは最近になって、どうも経済に暗雲が立ち込め、始めているような気がする。最大の援助国の一つである、サウジアラビアとの関係は、最悪の状態にある。シーシ大統領は必死に、サウジアラビアとの関係悪化を、否定する発言をしているが、誰もそれを信じてはいまい。
アメリカとの関係も必ずしも良くない。ロシアとの関係改善を進めているからだ、という見方もあろう。そして、つい最近ではアメリカやサウジアラビアとの関係に、悪影響を与える、シリアとの関係改善を、進めてもいるのだ。
エジプトはシリアのアサド体制を、テロから守るために、軍隊を派遣したというのだ。このニュースはイランが発し、それをトルコのサバ―新聞が伝えたものだ。この決定が事実であるか否かは別に、最近、シリアの国防大臣がエジプトを訪問し、シーシ大統領や軍幹部と協議している。
エジプトはアメリカ離れをし、ロシアに接近し、シリアとの関係を強化する方向に、完全に舵を切ったのであろうか。そうであるとすれば、エジプトとサウジアラビアとの関係は、完全に悪化することになろう。なぜならば、サウジアラビアはシリアのアサド体制を、一日でも早く打倒したい、と強く望んでいるからだ。シーシ大統領の勝算は、何処にあるのであろうか。
唯一の朗報は、エジプトの株が上がり始めたことだ。当然であろう、通貨が下がるなかでは、金を株に逃避させて、守るという事であろう。決してフローテング効果ではないのだ。