『リビアの混乱と将来予測』

2016年11月 1日

カダフィ体制が打倒された後のリビアは、リビアの部族や派閥が各地で、ミリシアを結成し、内戦状態が続いて久しい。そのリビアにはいま、主な三つの政治勢力が、存在している。

第一の勢力は、リビア東部の、トブルクを拠点とする政府であり、これの中心的人物は、アメリカ帰りのハフタル将軍だ。この東リビア政府は、国際的な信任を一度受けており、しかるべき政治力を、国際政治の場で維持している、と見なすべきであろう。

第二の勢力は、トリポリを拠点とし、この勢力は国連が中心で結成された、いわば西側諸国の傀儡政権、ということが言えよう。中心人物は国連に担ぎ出され、チュニジアから帰国したセラジ首相だ。彼らの政治組織は、全国民政府(GNA)と呼ばれている。

第三の勢力は、トリポリを拠点とする、ミリシア組織であり、トリポリの議会で、圧倒的な力を有している、国民議会(GNC)が存在する。この組織は主にミスラタの、ミリシアが中心的存在であり、戦闘集団が結成したものだ。

国連や西側政府は、何とかセラジ首相の権力を、強固なものにしたい、と考えているのだが、東のトブルク政府はシルテ近郊の、石油積出港を支配しており、妥協しそうに無い。

セラジ首相はハフタル将軍に、しかるべき高官の地位を与えることで、抱き込みを計ったのだが、歯牙にもかけられなかった。それは当然であろう、東側政府はリビアンのほとんどの、石油を積み出し港を押さえており、放置しておけばやがて,柿(セラジ政府=GNA)は熟れて落ちる、ということであろう。

トリポリに拠点を置く国民議会(GNC)も、軍事力を有しており、部族と地域の結集した組織であり、チュニジアから来たセラジに、頭を下げる気は毛頭無い、これまでもセラジ首相は、この国民議会(GNC)のボスのスエイヒリに、頭を下げてかろうじて、地位を保持してきていたのだと言われている。

アメリカやヨーロッパ諸国は、何とかしてリビアの石油と再建事業で、利益を上げたいと考えており、セラジ首相支援会議を開催した。この会議には、アメリカ、イギリス、イタリア、フランス、アラブ首長国連邦、サウジアラビアなどが参加した。アラブ首長国連邦とサウジアラビアは、戦費供出のためであろうか。

欧米諸国はリビアの石油を、一日も早く輸出できる状態にし、リビアの再建で仕事を得たい、と思っているのであろうが、このことに加え、無政府状態にあるリビアの海岸線からは、多数のアフリカ難民が、ヨーロッパに不法流入していることも問題だ。それを何とか阻止したい、ということでもあろう。

しかし、欧米が支援するセラジ首相と、その政府は名ばかりであり、リビアの各派を統一できる、とは思わない。結局は、リビアの今後を予想するとすれば、国民会議(GNC)と東リビア政府との、話し合いによる合意しかあるまい。

つまるところ、セラジ首相を首班とする、トリポリの政府は風前の灯、ということではないのか。それを何故、国連や欧米が創ったのか、疑問が沸くところだ。