『米イラクのモースル作戦予測の大違いは何故か』

2016年10月21日

 

 イラクのモースルに拠点を置く、IS(ISIL)に対するイラク軍、クルドのペシュメルガ軍、アメリカ軍を始めとする、合同軍の攻撃が始まって、数日が経過した。いまの段階はまさに緒戦であり、先のことを予測するのは、早すぎるかもしれない。

しかし、これまでの間にIS(ISIL)の戦闘員の多くが、モースルから逃げ出しているのではないか、と思われる。今回の作戦が明るみに出る、以前の段階から、IS(ISIL)内部では内部対立が起こったり、仲間割れの処刑が行われたり、金を盗む幹部が現れたり、という内部混乱が、目立ってきていた。

そして、今回の作戦が始まったわけであり、これまでの間に、相当数のIS(ISIL)の戦闘員が、モースルから逃げ出した、と考えるのが常識的な、判断であろう。それ以前にも多数のIS(ISIL)戦闘員が、ヨーロッパ諸国に帰国したとか、その他からの戦闘員も、イラクを脱出した、という情報が流れていた。

こうしたことから、モースル作戦は意外に早く、終わるのではないか、というのが私の予測だった。そして、イラクのアバデイ首相が最近語ったのは、予想以上に戦況が優位であり、作戦は計画以上に早く進展している、という内容だった。

しかし、アメリカ軍の幹部は『モースル作戦には時間がかかる、1年以上を費やさなければならないだろう。』と言い出している。このイラク側の判断とアメリカ側の判断の違いは何であろうか。実はアメリカには、それ以外の目的が、あるのではないのか。

アメリカはモ-スルのIS(ISIL)戦闘員を、シリアに安全に移動できるように、配慮するとも言っている。それは、モースルでIS(ISIL)が果たすべき役割は、済んだのでシリアに移動して、新たな作戦に当たれ、という意味ではないのか。

さすがに、このアメリカの発言には、シリアはもちろんのこと、ロシアもイラクもイランも、反発している。当然であろう、シリアに安全に移動させ、IS(ISIL)の戦闘員に無差別殺戮を、やらせようということなのだから。

それではまず、アメリカは何故1年以上、モースル作戦には必要、と言っているのであろうか。多分に推測されることは、イラクの石油施設を始めとした、インフラの徹底的な破壊ではないのか。それには1年の歳月が必要だ、ということではないのか。

他方、シリアに安全に移動できたIS(ISIL)の戦闘員は、シリアを徹底的に破壊する、ということではないのか。こうしたアメリカの考えを、トルコのエルドアン大統領は十分に分っており、何としてもモースル作戦に、参加した形にしたいのであろう。

トルコはモースル作戦に参加出来れば、その後のモースルを始めとした、イラクの再建計画に、参加する権利を得ることが、出来るからだ。トルコは最近になって、オスマン帝国時代の古地図を引き出している。

それには、モースルやキルクークを含む北イラクや、アレッポを含む北シリアが、オスマン帝国の領土と示されている。その事もエルドアン大統領の、夢なのであろう。