『中東短信』

2016年10月12日

 

:エジプト・ロシアが合同軍事演習

 今週、エジプトとロシアは、合同軍事演習を始めた。今回の軍事訓練は、主にパラシュート部隊の降下練習に絞られる。これはロシアがアフリカ大陸で、初めて行うものであり、意味は大きい。

 パラシュート部隊の降下練習は、テロ対策の一環であり、エジプト・ロシア双方にとって、意義深いものだ。勿論、訓練はエジプト領土内で、行われる。

 ロシアとエジプトは、さる8月には海軍の、合同演習を行っており、両国の関係が拡大していることを、意味していよう。

:エジプト・ギリシャ・キプロスが難民問題で合意

 エジプト・ギリシャ・キプロスが、難民にどう対応するか、について合意した。エジプトやリビアなど、北アフリカの国々からは、アフリカからの難民(移住者)だけではなく、シリアやアフガニスタン、イラクなどからの難民も、ヨーロッパに向かっているためだ。

 

:シリア戦闘激化はEUの後退か

 シリアにおけるロシア軍と、シリア軍の攻勢が、強まっているが、これはEUの立場が弱体化したからだ、という見方が、西側外交官の間で、語られている。

 なかでも、イタリア、ハンガリー、ギリシャ、スロバキア、キプロス、その他の国々は、ロシアとの経済関係強化を、希望しているために、ロシアをあまり、追い込みたくないようだ。

 また、ウクライナ問題については、シリア問題とは分けて考える傾向が、EU諸国の間では、強くなってきている。

ロシアのプーチン大統領は、クリミアについては、ウクライナに返還する意思が全くない、と語っており、もし、ウクライナ問題をシリア問題に、連結して話し合うことになれば、結論は当分出ない、ということになろう。

こうした状況がEU諸国をして、ロシア対応を弱体化させているのであろう。述べるまでもなく、ロシアはEU諸国にとって、最大のエネルギー供給国でもあり、関係を悪化させたくは無い、というのが本音であろう。

 

:トルコには2人の首相がいるとCHP党首

 トルコ最大の野党CHPのクルチダウール党首は『トルコには2人の首相がいる。』と批判した。

 その二人の首相とは、正式な首相はユルドルム首相であり、エルドアン大統領の義理の子息ベレト・エネルギー相が、非公式(影の)の首相だというのだ。

 確かに、ベレト・エネルギー相はたびたび、彼の権限外の、国家に関わる発言をしている。例えば、モースルをめぐる、イラクとの問題がそれで、本来であればこの問題は、首相か、あるいは外相が発言すべきものであろう、ということだ。

 クルチダウール党首はユルドルム首相に、彼の立場をきちんと守ってほしいし、自身の権限を誰にも分けないで欲しい、と語っている。したがって、この発言はクルチダウール首相というよりは、ベラト・エネルギー相に向けられた、批判であろう。