『ロシア中東で信用固めたか』

2016年10月11日

 

 ロシアの中東政策は、同地域諸国の信用を、勝ち得ているものと思われる。これまで、それほど関係がいいとは言えなかった、イランとの関係が、飛躍的に改善している。その些証はロシアがイランに対して、S300ミサイルを輸出したことと、イラン側がハマダーンの空軍基地を、シリア作戦に際してロシア軍に、使用させていることだ。 

 このことは、ロシアがイラン領内に、空軍基地を持ったも、同然ということであろう。もちろん、イラン政府は外国が自国内に、軍事基地を持つことを許可しない、とは言っているが、臨時的使用については、その限りではないとしている。具体的には、燃料の補給や物資の積み下ろしには、使わせているということであろう。

 シリアについても、ロシアはシリアのタルトース港を海軍基地として利用してきていたが、今後は恒久基地として、使いたいようで、シリアとの交渉を始めているようだ。今の時期にシリア側はこのロシアの申し出を、断る理由はあるまいから、タルトース港はロシア軍の、恒久基地になることは、確実ではないか。

 同時にロシアは、タルトース港やラタキア港に近い場所に、空軍基地も確保することになるのは、確実であろう。海空が揃えば、ほとんどの軍事行動は、可能となろうし、陸軍の緊急移送も、容易になろう。

 加えて、ロシアはエジプトに対しても、空軍基地の利用を、申し込んでいる。エジプトはナセルの革命が成立して以後、サダト大統領の時代まで、ソビエトと特別な軍事協力関係にあった国だ。したがって、エジプト軍のなかには親ロシア派が少なくない。兵器についてもロシア製の方を、好む傾向が軍幹部には、あるのではないだろうか。(ロシア製兵器は安価、堅牢、高性能)

エジプト政府は現段階では外国軍の自国内展開や、基地の設置について許可しないとしているが、この先どうなるかについては断定出来まい。ロシアがエジプト政府との間で、リビア国境から95キロの、シデイ・バラーニに空軍基地を含む、軍事基地を建設する、交渉をしている、とロシアの新聞イズベスチア紙が、報じたことにより、今回のニュースは広まった。

湾岸諸国やアメリカとの関係もあり、現段階ではおおっぴらには、このことを認めたくはないのだろうが、話は案外進んでいるものと思われる。エジプトがロシアから兵器を購入することも、最近になり拡大しているのだ。

加えて、ロシアのプーチン大統領がトルコを訪問したことにより、両国関係は飛躍的に改善している。ロシアはトルコに対しても軍事協力を申し出ている。ロシアはガス・パイプラインのトルコとの建設・協力も進めており、軍事的な協力関係、たとえば、イランが認めたような燃料補給、緊急着陸などは、認めるのではないか。その場合、NATOはどう反応するのであろうか。

今になって、ロシアはイラン、シリア、エジプト、そしてトルコとの特別な軍事協力関係を、構築する方向で、大きく動き出したということであろう。それは不明確で、不安定なアメリカの対中東政策に、中東諸国がついていけない、信用できないということから、起こっているのではないか。