エジプトは2012年まで、シナイ半島北部のアラファなど一部の土地の、外国人への販売を許可していた。実際には販売というよりは、香港などで行われているような、99年間の期限付き貸与、ということであったろう。
その後、2012年からは、シーシ大統領が国防相の時代に、シナイ半島の土地の、外国人に対する販売を、全面的に禁止にした。それは国防上の理由、ということであった。
以来、シナイ半島の土地を購入できるのは、エジプト国籍だけを有する国民か、エジプト人を両親に持つエジプト人の外国居住者、に限られたようだ。これに加え、戦略的に重要な、シナイ半島の土地の購入も、全面的に禁止されていた。
しかし、今回のハマド・ビン・イーサ・アルハリーファ・バハレーン国王の要望に、エジプイトのシーシ大統領は許可を出した。ハマド・ビン・イーサ・アルハリーファ・バハレーン国王は、シナイ半島のシャルム・エルシェイクという観光リゾート地(ムバーラク元大統領の別荘があることで知られる)の、ナアーマ湾に3軒のビラを建てたいようだ。
今回のシーシ大統領の決定は、ある意味でエジプト政府が、アラブの金持ちたちに対して、シナイ半島の観光地の土地購入に、風穴を開けることになるかも知れない。
ハマド・ビン・イーサ・アルハリーファ・バハレーン国王が、シナイ半島の土地を購入したという話は、一気に広まっているものと思われるが、そうなれば、クウエイトの国王、カタールの国王、アラブ首長国連邦の首長たちや、サウジアラビアの王族たちも、購入を申し込むことであろう。
その申し込みに対して、シーシ大統領はバハレーンの国王だけを、例外扱いするわけにはいかず、許可を出すことになろう。そうなれば、シナイ半島は各国の王族たちの、観光リゾート地として開発が、進むということになろう。
結果的に、シナイ半島は今後、軍事的な需要地域というよりも、観光の重要地域となり、しかも、多くの外国の要人が、居住することになろうから、平和なエリアに、変わるのではないか。
もちろん、その事はエジプトとイスラエルとの関係にも、好結果を生み出すかもしれない。過去4度の中東戦争で、シナイ半島はエジプト対イスラエルの、戦争の主要舞台となってきたが、これからは、そうはならないということだ。
あるいは、今回のバハレーン国王への、シナイ半島の土地販売は、経済苦が生み出した、結果かもしれないが、それは違う意味を、生み出すかもしれない。