サウジアラビアがペルシャ湾内部とホルムズ海峡、そして、オマーン湾で海軍の訓練を行うということだ。しかも、それは実弾を用いた、準戦闘訓練ということなのだが、一体その意図は何なのか。
当然このことに対して、イラン側は神経質な反応を示し、イランの海域に侵入することは許さない、と息巻いている。それは当然であろう。サウジアラビアの訓練が単なるものではなく、実弾射撃を含むものであれば、流れ弾がイランの海軍に到達し、両国の緊張関係が、一気に高まることもあろう。
問題は、ペルシャ湾での訓練にもあるが、ホルムズ海峡での訓練は、大きな国際問題になりかねない。そこは、世界の石油消費の半分以上が、通過する海峡だからだ。もし、イラン海軍とサウジアラビア海軍が衝突すれば、ホルムズ海峡は自動的に、閉鎖されることになろう。
オマーン湾での訓練も然りであろう。そこはイランのペルシャ湾外の港、バンダル・アッバース港があるところであり、中国との協力で大型港湾の建設も、進められている。そのそばでサウジアラビアという、敵国の海軍が動き回ることは、イランにとっては、目障りで仕方あるまい。
サウジアラビアはイエメンに軍事攻撃をかけ、1年が経過したいまなお、しかるべき明確な成果が、上がっていない。それにもかかわらず、今度はイランとの戦闘も、覚悟しているのであろうか。イエメン戦争の戦費は膨大であり、サウジアラビアの財政を、悪化させているにもかかわらずだ。
もし、サウジアラビアがイランと、戦争状態になったとしたら、それはイエメンの比ではあるまい。相当のダメージを覚悟しなければならない、ということであろう。
誰が今回の暴挙を進めたのであろうか。ムハンマド・サルマン副皇太子なのか、あるいは、他のサウジアラビア政府高官なのか。あるいは、外国の助言によるものなのか。
この展開をアメリカは喜んでいるかもしれない。アメリカの軍産複合体にとっては絶好のビジネス・チャンスになるからだ。しかし、世界経済に与える負の影響は、計り知れまい。
アメリカの強硬派は、未だにイランを攻撃したい、と考えているが、その正当な攻撃の、口実が無いのだ。もし、ここでサウジアラビアが、戦端を開いてくれれば、アメリカは喜んでサウジアラビアに、支援をするのではないか。
多分にサウジアラビアはそう考えているのかもしれない、アメリカの支援無しに、サウジアラビアはイランと、戦争することは無謀だからだ。しかし、必ずアメリカが、この戦争に参加し、サウジアラビアを勝利に導いてくれる、という保証は無い。イエメンの場合、アメリカは何もしなかった。アメリカがイエメン戦争でしているのは、高額な武器の供与だけだ。