『アメリカがイラク解放の邪魔、ISはシリアに安全移動』

2016年10月14日

イラク軍はモースル攻撃の、準備を整えたようだ。これまでも何度か、モースル奪還作戦を立てたようだが、その都度アメリカによって、阻止されている。ここに来てまた同じことが、繰り返されるのであろうか。

 アメリカがモースルなどで展開した、空爆作戦はこれまで、ほとんど無人地帯に対するものであり、しかるべき戦果は挙げていない。その事は、IS(ISIL)がアメリカ軍の空爆で被害をこうむらなかった、ということだ。

 アメリカは今年中に、モースルをIS(ISIL)の手から奪還する、と言っているが、それに先立って、アメリカが進めていることは、サウジアラビアの情報長官を仲介者に立てて、9000人以上のIS(ISIL)の戦闘員を、モースルからシリアの東部に移動させる、計画のようだ。

 その移動の際の安全を保証するのは、サウジアラビアの情報長官だ。アメリカが保証しないのは、国際的な非難を受けなくて、済むからであろうか。

 アメリカは何を考えているのであろうか、事情通の語るところによれば、これはロシアの空爆作戦を、失敗に終わらせるためのものであり、ロシアのシリアやイラクにおける作戦の失敗イメージを、作ろうという考えのようだ。

 加えて、アメリカはアサド体制を弱体化させるために、イラクのモースルに拠点を置く、IS(ISIL)の戦闘員を、シリア東部に大量に、移動させる方針なのだ。結局、この作戦が成功すれば、アメリカはロシアのこの地域での、優位を覆すことが出来、サウジアラビアが望む、アサド体制の弱体から、打倒も可能になるということであろうか。

 しかし、アメリカが考えるような作戦が、果たしてスムーズに進むのであろうか。サウジアラビアがIS(ISIL)に対して、モースルから東シリアへの、安全な異動を保証したとしても、それをロシアが手をこまねいて、見ているわけではあるまい。必ずロシアが移動中のIS(ISIL)戦闘員を、攻撃することになろう。

 シリアも然りであろう。つまり、結果的には、モースルにいたIS(ISIL)の戦闘員が、シリアに移りIS(ISIL)対イラク軍アメリカ軍の戦いが、シリアでIS(ISIL)対ロシア軍シリア軍の戦いに、変わるだけであろう。

 最近、アメリカはモースルの戦いに、トルコ軍は参加できない(合同軍のメンバーではない)と語り、次いで、PKKも参加出来ないと語っているが、それはアメリカ軍の戦闘能力が高くなったからではなく、IS(ISIL)との間で裏取引が成立したので、トルコ軍やPKKの戦闘力を必要としなくなったということであろう。

 机上の空論は易く、実戦は甘くは無い。これから、実際には何が起こるのか見極めたい。