『9・11米上下両院で通過、悪化懸念される米サウジ関係』

2016年10月 2日

 アメリカの上下議会で911に関する決議が出された。これは2001年に起こった、911日のニューヨーク貿易センタービルに、旅客機が突っ込み、崩壊した事件のことだ。

 当初、このビルの中にいた人達の犠牲者数は、6000人程度と見られていたが、最終的には、3000人程度といわれている。いずれにせよ、アメリカのニューヨークのど真ん中で起こった、この事件は世界を驚愕させた。

 その後の調査で、この旅客機をハイジャックし、貿易センタービルに突っ込んだのは、サウジアラビア人による犯行だった、ということになった。その犯人たちは、フロリダの飛行機操縦学校で、12ヶ月程度、小型プロペラ機の操縦を習っていた、という説明もあった。

 ビル解体工事の専門家の手によるような、垂直に崩壊する、ビルの崩壊の仕方や、この程度の訓練で大型旅客機を操縦できるのか、といった多くの疑問が生まれたが、それに対する回答は無く、ファイルは閉じられた。

 それから既に、15年以上もの歳月が経過しているが、つい最近、遺族の強い要請があり、アメリカの上下両院議会は揃って、この911事件の責任は、サウジアラビアにある、という結論を出した。

ハイジャック犯19人のうちの、15人がサウジアラビア国籍だったというのだ。そして、在米のサウジアラビア大使館の、スタッフが彼らに対して、資金を提供し続けていた、という報告もなされている。

 その事は、アメリカ政府がサウジアラビア政府に対して、遺族への賠償を命じることになる、ということだ。サウジアラビアがこの問題で、今後どう対応するか分からないが、流れとしては結局、賠償金を支払うことに、なるのではないか。

 これまでに、サウジアラビア政府は70億ドルを、賠償金として出したが、受け取りを拒否されている。遺族側は『アメリカ国内で、そのようなテロが起こることは許せない。厳罰に処すべきだ。』というのが、主な要求だというのだ。

 この上下両院議会の出した結論に対して、オバマ大統領は拒否したが、結局、彼の拒否は無視されることになり、両院議会で通過してしまった。述べるまでも無く、サウジアラビアはアメリカにとって、最も協力的で親しい相手国だ。

 その国に対して、十分な証拠も無いままに、賠償を求めるということは、今後のサウジアラビアとアメリカとの関係を、確実に悪化させることになろう。

 サウジアラビアはいま、過去に例を見ないような、経済危機に直面している。石油価格の暴落と、イエメン戦争の戦費がかさむために、遂には外国の金融機関から金を借り始め、アラムコの株も外部に売り始めてもいるのだ。

 従って、この時期にアメリカ政府が出す賠償請求は、巨額に上るであろうことから、サウジアラビア政府にとっては、相当な負担となろう。

 問題は何故いまのタイミングで、このことが決議されたのか、ということだ。実はサウジアラビア政府と、アメリカ政府との関係は、必ずしもしっくり行っていないのだ。アメリカはサウジアラビアに対して、何を考えているのであろうか。

 興味深いことに、この問題をめぐって、アメリカでは国防省のトップたち,CIAのトップ、そしてヒラリー・クリントンのナンバー・ツーなどが、揃って上下両院議会の出した結論に、反対しているのだ。