『複雑で抜け道が見えないリビア』

2016年9月28日

リビアはカダフィ大佐が殺されて、新しい政権が誕生したが、その後、混沌とした状況が続いている。もともと、リビアはトリポリタニア、キレナイカ、フェザーンと大きく分けると、三つの地域に分かれていた。

カダフィ大佐が権力の座から下ろされると、この三つの地域からそれぞれに、権力を狙う動きが起こり、未だにまとまっていない。IS(ISIL)がリビアのシルテに陣取った後も、誰がこの街を解放するかで、争いがあった。

東のリビア政府を代表するハフタル将軍は、様子見に回り、真剣に攻撃する気が無い。それはいま一番シルテで頑張っている、ミスラタのミリシア・グループに戦闘を続けさせ、ミスラタ・グループもIS(ISIL)も共に弱体化したところで、出て行こうという作戦だ.(ミスラタは500人以上が戦死している)

では何故ミスラタ・グループがそんな戦闘力を持っているのかというと、実はトルコが彼らを支援し、資金と武器を提供しているのだ。これでは戦闘が止むはずが無い。そしてミスラタの住民の戦闘意欲が他に比べ、強いという言うことであろうか。

それでは統一リビア政府はといえば、アメリカやヨーロッパの支持を得ているとはいえ、実質的に戦闘力を持っていないようだ。トリポリの統一リビア政府は、トリポリの議会の代表によって、牛耳られており、実質的な力はセラジ首相には無い、と言われている。

そこでセラジ首相は東のリビア政府と、何とか関係を改善したいと思い、東のリビア政府を代表する、ハフタル将軍に対し、統一リビア政府への発言権を、増すよう呼びかけている。

しかし、ハフタル将軍はまだ様子見の段階だ、と思っているのであろうか。このセラジ首相の呼びかけに、応えようとしていない。ハフタル将軍の側にはロシア、ヨルダン、サウジアラビアなどが付いているため、あせる必要は無いということであろうか。しかも彼は米国籍を、持ってもいるのだ。

他方、IS(ISIL)はと言えば、イラクやシリアなどでの劣勢から逃れた、IS(ISIL)の戦闘員たちが、シルテに移動してきていることもあり、リビアでは不利になってきてはいるが、大幅に戦闘力を落とすとは思えない。

こうしてみると、どうやら、もうそこまでといったシルテ追い込みは、もう少し時間がかかるかもしれない。ただ言えることは、だからといってIS(ISIL)が今後、リビアで支配地を拡大したり、勢力を拡大するということは、無いのではないか。『柿は熟れれば落ちる』のを、ハフタル将軍は待っているのであろうか。石油輸出港は彼が掌握しており、リビアはいま破産一歩手前になっている。