『トルコ・ギュレン氏の天王山の戦い始まる』

2016年9月24日

アメリカに亡命して、既に10年以上も経過している、フェイトッラー・ギュレン氏は、彼のカリスマ性が飛び抜けており、支持者が多いことから、これまで、トルコ軍やその他のグループに、敵視されてきていた。
今回、7月15日に起こったクーデター未遂事件で、エルドアン大統領はフェイトッラー・ギュレン氏を、その首謀者と言って非難し、アメリカにフェイトッラー・ギュレン氏の、引渡を要求し続けてきている。(日本に対しても、ヘズメト・メンババーへの圧力行使を、呼びかけているし、ヨーロッパ諸国に対しても同様だ。)
エルドアン大統領にしてみれば、フェイトッラー・ギュレン氏と彼の組織ヘズメトを潰してしまえば、後は恐れるべき政敵は居ない、ということになる。このため、クーデター未遂事件はフェイトッラー・ギュレン氏が背後にいて、CIAが支援していた、とまで発言している。
この結果、ヘズメトのメンバーと関係者を、全ての公職から追放し、逮捕投獄し、市民権を剥奪する、という徹底振りだった。その数は10万人を超えるというのだから、尋常ではない。
企業経営者も多数含まれていたために、トルコの経済は悪化したし、その建て直しを考える有能な官僚も、多くが首になっている。今では真面目に、トルコの政治、外交、経済を考える官僚が、ほとんど居なくなっているのだ。
こうした実情から、最近、ムーデイやフィッチが発表した、トルコ経済に対する評価は、大幅に引き下げられ、Ba1という結果となった。このBA1という評価は、ジャンク債であり、投資対象にはならない、というものだ。
フェイトッラー・ギュレン氏はこのような状態では、トルコが崩壊してしまうとして、ヨーロッパ諸国に対し、トルコへの介入を求めている。トルコのエルドアン大統領による独裁と、暴政を止めて欲しい、ということであろう。
ところが、エルドアン大統領はそのようなことは気にも留めず、フェイトッラー・ギュレン氏の引き渡しを、アメリカに要求し続けている。これに対し、アメリカ政府は十分な証拠があれば、引渡を考えるが、今の段階では証拠は不十分だ、としてエルドアン大統領の要求を、拒否している。
フェイトッラー・ギュレン氏は『証拠が揃い、アメリカが追放すると言うのであれば、第三国への亡命は求めず、トルコに帰国する。』と語っている。ただし、『その前に、ヨーロッパ諸国など公平な立場の国々によって、クーデターと彼の関与に関する調査を、行われるべきである。』とも語っている。
アメリカが法治国家の代表である以上、証拠不十分の中で、フェイトッラー・ギュレン氏をトルコに引き渡すとは思えない。フェイトッラー・ギュレン氏はアメリカにとっては、対トルコ政策上、使える人物なのでもあろう。
いまの時点で、フェイトッラー・ギュレン氏が帰国することになれば、長い裁判が続き、その後は終身刑か、死刑ということに、なるのではないのか。その場合の裁判は、決して公正なものにはなるまい。(あるいは、即決で死刑が決まることも、ありえよう。)
フェイトッラー・ギュレン氏は命をかけて、世界にエルドアン体制の権威主義、独裁体制の非を、訴えたということであろう。