今でもムスリム女性にとって、スカーフやアバーヤは重要な衣類だ。スカーフは場合によっては、ブルカといった、完全に顔を隠すタイプの、全身をも包むものもある。身体だけを包む場合はアバーヤという、ガウンのようなものだが、これは時折、中東の映像がテレビでも流れて、ご存知だの方も多いだろう。国によってはロング・コートの場合もある。
いまどきの女性がこんな服装をして、嫌ではないのだろうか、と思う人も少なくないだろう。しかし、彼女たちにとっては、このような服装の方が、安心できるのだ。
先日は東西の架け橋といわれる、イスラム世界で最も先進的な、イスタンブールの街で、若い女性がパンツ・スタイルで表に出たら、男に暴力を振るわれた、という事件が報じられた、そして後日、この犯人は無罪釈放になった、というのだからあきれる。
つまり、イスラム的服装は女性たちが彼女たちの、安全と尊厳を守る上で、大事なものなのだ。だから彼女たちはそうした服装をすることを、嫌がっているということではないのだ。
先日、ドイツからはこのイスラム女性の、服装に関係するニュースが伝わってきた。それによると、レストランのオーナーがイスラム女性に対して『スカーフを取るか、それが嫌なら店から出て行け。』と怒鳴ったというのだ。
これまでも、ドイツには100万人を超える(一説には200万人を超えるとも言われている)、トルコ人が住んでいることから、スカーフをかむった女性は、特に珍しくは無かったろうに。こうしたことが起こるのは、ドイツ人が難民問題に発して、イスラム嫌いになっており、それが相当ナーバスなレベルにまで、達しているということであろう。
ドイツでは難民受け入れに、寛容な政策を取っている、メルケル首相の政党が、選挙で大幅に支持を減らしてもいる。こうしたドイツ社会で起こっている現象は、西ヨーロッパの各国でも、多かれ少なかれ起こっているし、イスラム圏に隣接する、東ヨーロッパの国々でも、起こっている現象なのだ。(アラブ首長国政府は自国民に対して、外国ではテロと間違われるので洋装をしろと命令している)
アメリカからも、イスラム女性が暴漢に襲われた、というニュースが、伝わって来ており、最近ではその手のニュースは、ニュースとしての価値が下がっているのかもしれない。その事は社会現象としては、危険な兆候であろう。
いまのところ、日本ではそうした現象は見られないが、中国人観光客に対する非難報道、朝鮮韓国に対する非難などは、まさにヘイト・クライムのレベルではないのか。非難は客観的に、論理的に行わなければ、やがて、日本非難を生む危険性があろう。