『エルドアン大統領の藪蛇』

2016年9月16日

 エルドアン大統領は715日に起こった、クーデターの裏には、フェイトッラー・ギュレン氏がおり、計画したものだった、と非難した。そして、その背後にはCIAがいた、とまで発言してしまった。

 そして、そのことを根拠に、エルドアン大統領は執拗に、アメリカ政府に対してフェイトッラー・ギュレン氏を、引き渡すよう要求し続けてきた。つい最近になると、引き渡しではなく、アメリカ国内で逮捕する要求もした。フェイトッラー・ギュレン氏が第三国に、逃亡する危険性があるからだというのだ。

 他方、トルコに駐在するアメリカ大使に対しては、クルドの味方をしている、と非難し、査問している。加えて、シリアではアメリカが要請したIS(ISIL)への攻撃の手を抜き、トルコ軍はもっぱらクルドに対する、攻撃を繰り返している。

 述べるまでもなく、クルドのミリシアは勇敢であり、IS(ISIL)対応では、果敢な戦闘を展開し、アメリカ軍を喜ばせているのだ。そのクルドをトルコ軍が、攻撃するのだから、トルコとアメリカとの関係は、良くなるはずがない。

 アメリカは1950年代から、クルドに国家を持たせたい、と考えていたという歴史的な記録も、最近になって掘り起こされている。アメリカは第二次世界大戦後、アルメニアやクルドなどに、国家を持たせよう、と考えていたというのだ。

 加えて、アメリカは何度も書いてきたが、ペルシャ湾の海底ガスを、イラク・シリア経由で、欧米の市場に運びたいために、クルドの自治区か国家を創りたい、と考えているのだ。

 こうしたアメリカの考えを無視し、エルドアン大統領はやみくもに、彼が政敵と考えたフェイトッラー・ギュレン氏の、引き渡しを要求したのだから、アメリカ側からは逆の反応が、出て来るのは当り前であろう。

 アメリカ政府は議会で、ギュレン氏と今回のクーデターに関する、公聴会を開催することにし、そこには、そうそうたる人士が、発言者として呼ばれることになった。そのなかには、ギュレン・グループのヤイラ氏も含まれている。彼はハッラーン大学の教授で、2015年以来、病気(政治亡命であろう)を理由に、アメリカに滞在している論客だ。

 彼以外には、過激主義国際センターの代表がいるが、彼はフェイトッラー・ギュレン氏のクーデター関与を否定している。ヨーロッパ・ユーラシア外交サブコミテイ代表、アメリカ開発センター代表、ジャーナリスト防衛センター代表などが、発言者リストには、含まれている。

 これらの代表者に共通する認識は、フェイトッラー・ギュレン氏はクーデターに、関わっていないという点であり、一部の代表者はエルドアン大統領と、与党AKPこそがクーデターを、計画したと考えている。

 議会の証言でどのような発言が、出てくるのかまだわからないが、エルドアン大統領にとっては、不都合なものになるのではないか。また、最終的な結論が出る前の段階でも、この議会証言の内容によっては、エルドアン大統領と与党AKPは、相当のダメージを受けることに、なるのではないか。まさに藪蛇とはこのことであろう。