最近になって、サウジアラビアのイスラエルに対する、見方に大きな変化が、起こってきているようだ。そのきっかけになったのは、サウジアラビア政府の顧問だった、アンワル・エシキ氏のイスラエル訪問だった。
アンワル・エシキ氏はイスラエルで大歓迎され、ゴールド氏と握手も交わしている。その折の合同写真は、各方面に公開され、マスコミでも掲載されている。つまり、アンワル・エシキ氏とサウジアラビア政府は、動かぬ証拠を世界に向けて提供した、ということだ。
もちろん、このアンワル・エシキ氏のイスラエル訪問について、サウジアラビア政府は個人的なものであり、政府が関与したものではないと説明した。だが、これに先立ち2014年には、トルキー・ビン・ファイサル王子がイスラエルの軍情報部のトップである、アモス・ヤドリン氏に会っており、サウジアラビア政府のイスラエル接近の動きは、否定し難いものに、なって来ているのではないか。
サウジアラビアがこうした、外交上の大変革に踏み切り始めたのは、イランとの関係、アメリカとの関係に、あるのではないかと思われる。イランはシーア派の総本山であり、サウジアラビアと対立関係にある。
しかも、イランは軍の強化を進めており、独自に最新兵器を開発し、ロシアからはS-300ミサイルを輸入してもいる。サウジアラビアが嫌悪するレバノンの、ヘズブラの最大のスポンサーであり、シリアのアサド体制支持者であり、イエメンのホウシ・グループの、支援者でもあるのだ。
しかし、サウジアラビアの不安とは別に、アメリカは次第にイランとの関係を、改善する方向にある。その具体的な例は、まず、経済制裁を基本的に解除したことであり、ボーイング旅客機を輸出することに、なったことであろう。加えて、凍結していた40億ドルの金を、イラン側に渡しているのだ。
アメリカとの関係でも、アメリカは次第にサウジアラビアの国教である、ワハビズム(スンニー派の原理主義)が危険なものだ、と捉え始めている。それはIS(ISIL)の根本理論は、ワハビズムと共通するものだからだ。
加えて、アメリカはサウジアラビアという王国は、前近代的な体制であり、非民主的な体制だ、とも考えている。サウジアラビア政府が進める斬首刑(今年だけで150人以上)に、嫌悪感を抱いてもいる。
つまり、アメリカはやがてはサウジアラビアの王政を、打倒しようと考えているのではないか、という懸念が拡大しているのだ。イエメンに対するサウジアラビアの戦争も、後ろではアメリカが支援していたが、次第に非人道的だ、として批判をするようになって来ている。イエメン戦争はアメリカが仕掛けた、サウジアラビアに対する、罠なのかもしれない。