『サウジアラビアシリア難民250万人受け入れへ』

2016年9月23日

 

 国連の難民と移民の会議で、サウジアラビアのムハンマド・ナーイフ皇太子は、サウジアラビアが250万人のシリア難民を、受け入れることを発表した。しかし、これには疑問が浮かぶのだが、実際に実行するとなると、種々の問題が出てくるものと思われる。

第一に言えることは、サウジアラビアの現在の人口が、3000万人を少し上回る程度であり、このうちの700万人程度が、外国からの出稼ぎ者であるはずだ。そうであるならば、250万人という数は、サウジアラビアの人口の、約10パーセントに当たるからだ。(日本に例えれば、1300万人の難民が入ってくるということだが、日本でも対応能力は無いのではないかと思われる。) 

難民を正式に受け入れることになれば、当然、住宅の提供や教育、医療サービスの提供に加え、当分の生活費も支給しなければなるまい。その額は一家族にして、月額500ドル程度であろうか。

つまり、月額にして125億ドルの援助資金が、毎月サウジアラビアから、提供されるということだ(500ドルの支援金が家族単位であれば、支給総額は大幅に少なくなろう)。石油価格が高騰している時なら、何の問題も無かろうが、さすがのサウジアラビアも、今は台所事情が厳しいのだ。 

サウジアラビアでは石油価格の低迷もあり、大手の建設会社が外人労働者に、数か月にも渡って給与を未払にしている、その原因は政府が支払ってくれないからだ、ということも伝えられている。インド政府などはこの事態に怒り、自国民を連れ帰ったほどだ。

しかし、ムハンマド・ナーイフ皇太子は、この会議のなかで、住居と生活費を保障すると語っているのだ。これまでサウジアラビアが、シリアから受け入れていたのは、労働契約によるものであり、受け入れ企業が明確になっていた。また、彼らには6か月毎に、500ドルの滞在税の支払いも、義務付けられているようだ。

それではそのルールは、難民には当てはまるのか、というとそうではあるまい。難民がサウジアラビアに入国し、仕事に就いた場合(潜りで働いた場合)は、どうするのであろうか。難民はサウジアラビア政府からの援助金、そして労賃は免税になるかもしれない。そうなれば、シリア人の間に、不満と対立が、生まれるのではないのか。 

いずれにせよ250万人とは莫大な数であり、受け入れは段階的に行われる、ということであろうが、毎年10万人の受け入れと仮定しても、大変な作業であろう。 

あるいは、この嘘のような大きな話は、シリア問題が近い将来、解決するという、サウジアラビア政府の予測に、沿ったものであろうか。 

そうであるとすれば、この話は二重の朗報であろう。つまり『サウジアラビアはシリア難民250万人を受け入れる』『近い将来のシリア戦争の終結』という。