『アメリカの勝手な言い分が危機を生んでいる』

2016年8月24日

 

 アメリカは合同軍なるものを結成し、シリアの内戦に勝手に介入している。ロシアの場合は正式に、シリア政府が介入を要請しての駐留であり、それに沿っての作戦行動だが、シリア政府は何も、アメリカの介入を頼んではいない。

 シリア政府が軍を動かして、反体制グループに対する、攻撃を行っているが、これに対して、アメリカは限界を超えれば、シリア軍機を撃墜する、と息巻いている。それは、アメリカが勝手に派遣した、反アサド派のグループへの軍事顧問がいるからだ。

 反アサド派のグループとは、シリアのクルド組織YPGや、ISISIL)などだが、もちろん、アメリカ政府はISISIL)に対して、軍事顧問を派遣している、とは言っていない。しかも、アメリカはこの反体制グループへの攻撃も、自国の軍事顧問に対する攻撃と、同等にみなし反撃する、と言っているのだ。

そこで問題になるのは、トルコ軍によるIS(ISIL)や、クルド・グループに対する攻撃を、アメリカはどう判断するか、ということだ。ここにも、トルコとアメリカとの間の、亀裂が見えるような気がするのだが。

 アメリカが激怒し始めたのは、シリア北部に陣取っている、シリアのクルド組織YPGや、IS(ISIL)に対するシリア空軍による、爆撃が始まったからだ。以前にも同じことが起こり、アメリカ軍機が飛び立った時は、既にシリア軍機が作戦を終えて、その場から飛び去っていた。

 もし、シリア機がその場に留まっており、アメリカ軍機がこれを捉えていれば、アメリカはシリア機を撃墜していたであろうし、またその逆に、シリア機がアメリカ軍機を撃墜していた可能性も、あったであろうと思われる。

 問題は、アメリカが勝手に設けた、シリア領空へのノー・フライ・ゾーンを、何処の誰が認めるかということだ。アメリカ国内ではケリー国務長官と、大統領候補のヒラリー女史が認めているが、オバマ大統領は必ずしも、このノー・フライ・ゾーンの設定を、歓迎してはいないようだ。

 アメリカ軍機による攻撃がシリア機だけで終われば、問題は拡大しないだろうが、アメリカ政府はシリア機だけではなく、ロシア機も攻撃の対象にする、と言い出している点だ。

 ロシアのプーチン大統領はアメリカと、事を構えようとは思っていないだろが、アメリカ側には多くの、ロシアとの戦争を望む人士がいるのだ。プーチン大統領はアメリカの勝手な発言に、応える気は無いだろう。

アメリカの戦争待望論者と、強気のプーチン大統領が、重大な危機を生み出す可能性が、あるということだ。今後、ロシア軍機とアメリカ軍機が、スクランブルを行い、その結果、どちらかの戦闘機が撃墜される、という事態も発生しうる状況に、なって来ているということではないのか。

 戦略は最悪の状態を想定して、建てるべきなのが常識だ。であるとすれば、いまの状況は極めて危険だ、と判断し、今後の対応を検討する必要が、日本にもあろう。しかし、日本の官民にはそんな切迫感は、みじんもあるまい。