ここに来て、ロシアとイランとの関係が、急速に進展しているが、それはアメリカにとって、大きな脅威となっていよう。述べるまでも無く、イランはアメリカの盟友サウジアラビアの、最大の敵国であるからだ。
イランはアメリカとの間で、いまだに核開発問題が燻ってもいて、危険視する間柄でもある。そうした中でイランに、ロシアがイランの友人として、登場するのだから、アメリカはやり難くてしょうがないであろう。
ロシアは既にイランの空軍基地から、爆撃機をシリアに2度発進させているが、これはロシア空軍の戦果を、引き上げるだけではなく、地域全体にとって、ショッキングな出来事として、受け止められている。
ロシアはこれでシリアとイランとに、空軍基地を持つことになった、と見ていいのではないか。もちろん、イラン政府はロシアに空軍基地を、永久に使わせるつもりは無いと言い、あくまでの臨時的な、措置だとしている。
ロシアはこのことに加え、トルコのNATOが利用している、インジルリク空軍基地を使いたい、と言い出している。最近のトルコとロシアとの関係の、急速な進展は、あるいはトルコをして、ロシア軍がインジルリク空軍基地を使うことを、受け入れるかも知れない。そうなると、中東の軍事外交、地図は大きく、塗り替えられることになろう。
イラクでも、アバデイ首相はアメリカの軍事的介入を、不快としている反面、ロシアの台頭を歓迎する意向を、明らかにしている。こうなると、アメリカは次第に中東全域に対する覇権を失い、影響力を低下させていくかもしれない。
現段階では、アメリカにはロシアの進出を抑える、何の名案もなさそうだ。アメリカは中東各国の国民から、毛嫌いされており、各国政府も、その国民の意向を、無視するわけにはいかないのだ。
加えて、トルコもロシア製のミサイル・システムに強い関心を持ち始めており、検討後には輸入したい、と考えているようだ。そうなると、兵器市場としても、アメリカは中東で足場を、減らしていくことになろう。ロシアの兵器に対して、エジプトも関心を高めており、既に相当量輸入している。
ロシアのイラン空軍基地使用と、そのことによる軍事成果は、ロシアに対する信頼感を、中東各国で強めていくことになり、アメリカ寄りの国々のなかでも、次第にアメリカとは距離を置き、ロシアに接近する動きが、顕著になって来るのではないか。
これはまるで、オセロのゲームではないか?