8000万人近い人口を誇り、高い教育レベルで知られる、中東の覇者トルコが、いま人材難で苦しみ始めている。それは先のクーデター以後、政府が進めたギュレン狩りの結果だ。
6000人、7000人の教員が逮捕され、首になり、一部は投獄された、というニュースが続いているが、これでは教員不足が起こっても、無理からぬことであろう。ギュレン系の学校は沢山閉鎖され、教員も処罰を受けたわけだが、生徒たちはどうなったのであろうか。
もちろん、ギュレン系教員の処罰後には、補充教員の募集が行われている。新に採用される補充教員は新米であり、経験がないわけだから、教育のレベルは落低下する、ということになろう。
ギュレン系のファーテハ大学も閉鎖になったが、在校生が他の大学に移ろうとしても、それまでの成績証明書や在籍証明書は、出してくれないだろうから、再度試験を受けて、1年からやり直さなければならないだろう。その経費と時間の無駄は、どうカバーされるのか。
軍でも今回のクーデター後の処分は、大きな問題になりつつある。空軍のパイロットに、不足が出て来ているのだ。政府はこれをカバーするために、265人の新規パイロットを、採用すると発表したが、民間機のパイロットが直ぐに、戦闘機のパイロットになれるわけは無く、当分の間の訓練が必要で、その間、空軍は機能マヒ状態に陥ろう。
空軍の戦闘機のスピードは民間機よりも速く、飛行時に受ける圧力に慣れて操縦するまでには、相当の時間と費用がかかるのは、何処の国も同じことだ。クーデターでトルコは莫大な資金を、無駄にしたということであろう。
それは空軍だけではなく、陸軍や海軍でも、同じような現象が起きている、ということであろう。いまの段階では陸海軍から、そのような話は出てきていないが、陸海軍の作戦立案が、いい加減な状況に、あるのではないか。つまり、トルコ軍はいままともな戦闘が、出来なくなってきているということだ。
この好機を、クルドのPKKやIS(ISIL)が見逃すわけはなかろう。クーデターは抑えることが出来たが、エルドアン大統領はいま、本当の敵と対峙しなければ、ならなくなったということだ。
それは官僚の世界でも同じであり、多くの有能な人材が首になっており、国家の運営は思うように、いかなくなるだろう。今後、トルコは経済は困難に向かっていこうが、その対策、改善策を立てられるような、人材は政府内にはあまり、残っていないのではないか。
民間の経営者たちも、多くが逮捕され投獄され、会社を潰されているが、政府はギュレン系企業の数は、6500社だと言っていた。それも片端から潰していくということなら、トルコ経済は破滅するだろう。
官僚や警察、検察たちの多くは、グレー・ゾーンの官僚や民間人、軍人、判事、検察、警察まで逮捕し、その逮捕者の数を、エルドアン大統領に報告することによって、点数を稼いでいるようだが、その結果は、自分の首を絞めているようなことになろう。
クーデターを潰すことが出来た、という悪酒の酔いは、何時醒めるのか、国民は何時正気に戻るのか。二日酔いが醒めるのは、早いに越したことはない。ありえない大計画や大取引で、エルドアン大統領は国民を喜ばせているが、それは麻薬のようなものでしかない。トルコという国と国民の身体が、本格的に蝕まれる前に、何とかしたいものだ。