『トルコのエルドアン大統領は世界の暴君に』

2016年8月10日

 

 トルコのエルドアン大統領は、世界の暴君になったのか、あるいはイスラム帝国のスルタンになった、とでもいうのであろうか。彼の欧米に向けた言葉は、命令口調であり、交渉の余地を残していない。

 ヨーロッパ諸国に対しては、シリアを始めとした難民の流入を、抑えてほしければ、トルコが今まで要求してきた、全てを受け入れろと語り、トルコ人のEUへのビザ・フリーやEU加盟、そして60億ユーロの難民救済資金の提供を要求している。

 この問題はヨーロッパ諸国にとっては、対応が極めて困難であり、トルコの要求を呑むことも、拒否することも出来ないでいる。難民という大洪水が、ヨーロッパに押し寄せる危険性を、EU諸国は十分わかっているからだ。ただ、ヨーロッパ諸国はエルドアン大統領のこの強引な要求を、時間をかけても、飲むとは思えない。何時かの時点で、反撃に出て来よう。

 アメリカについてもしかりだ。エルドアン大統領はアメリカに亡命している、イスラム学者フェイトラー・ギュレン氏の引き渡しを、要求している。彼は今回のクーデターの黒幕であり、テロリストなのだから、有無を言わず引き渡すべきだ、というのが彼の主張だ。

 アメリカ側はギュレン氏がクーデターに関与していた、あるいはテロのボスだというのならば、その明確な証拠を出せと言うが、エルドアン大統領はその必要はない、そんなことでアメリカはトルコとの関係を、破壊するのかと凄んでいる。

 つまリ、エルドアン大統領はアメリカに対して、超法規的な対応を要求しているのだ。そんなことは、法治国家のアメリカには、受け入れられないことは確かだ。

 ギュレン氏ばかりではない。世界中で展開しているギュレン系の、『インターナショナル・スクールのスタッフを引き渡せ』『学校を閉鎖しろ』と幾つもの国に要求している。リビアにいる何人かの教員も、引き渡し要求の対象になっており、リビア政府は対応に苦慮している。

 ビジネスマンも同様に、国内で取り調べを受け、逮捕され投獄されている。彼らはギュレン組織のメンバーであったり、支持者だということが、逮捕の根拠になっているのだ。日本に留学している、中央アジアの留学生についても、在日トルコ大使はギュレン組織との関連で、日本側の奨学金を提供している財団に対して、彼らへの奨学金を止めろ、と要求したと伝えられている。

 いまトルコの公務員の間では、嫌疑がグレーであろうが白であろうが、出来るだけ多くの人たちを、逮捕し投獄することが、出世の手段となっているのかもしれない。まさにエルドアン大統領の暴虐な、独裁体制ではないか。

 先日、トルコのイスタンブールで開催された、クーデターに反対するトルコ再生の国民大集会には、100万人の国民が参加した、と伝えられている。あるギュレン派の経営者は、エルドアン大統領によって自社が潰されることを恐れ、この集会に泣く泣く参加したところ、あちこちから激しい非難を浴びたということだ。

 このトルコの現状をどう判断するか、エルドアン大統領を独裁者だとみるか、あるいは大英雄とみるのか。エルドアン大統領はこの国民大集会を機に、『トルコは生まれ変わった、新生トルコがスタートした。』と語り、建国の英雄ケマル・アタチュルクを否定した。これからは彼自信が、第二トルコ共和国の建国の父になる、ということであろう。