いま、トルコのエルドアン大統領にとって、最大の政敵になっている人物、ファタフッラー・ギュレン氏(トルコ人は彼をフェトッラー・ギュレンと呼ぶか、ホジャと呼んでいる。ホジャとはイスラム学者のことだ)が、エジプトのガド・テレビのインタビューを受けた。
ギュレン氏はテレビ・インタビューのなかで,西側諸国はエルドアン体制を打倒するために、トルコ問題に介入すべきだ、と語ったといことだ。いまの段階で、そこまでギュレン氏が思い切った発言をしたとは、思えないのだが、そのようなニュアンスの話をした、可能性はあろう。
なお、このインタビューに成功したガド・テレビは、アラブ首長国連邦と強い関係にある、と言われており、社長のムハンマド・ダハラン氏は、ファタハの元幹部であった人物だ。(M・ダハラン氏はアッバース議長の政敵で、ガザの責任者であったが、更迭された人物だ。)
このニュースを流したのは、エルドアン大統領にべったりの、トルコのサバ―紙であることを考慮に入れて、ニュースの信ぴょう性を、考える必要があろう。そして、彼ギュレン氏はトルコが市民戦争に向かっている、とも語ったというのだ。
いまの段階では、中東諸国のなかで、ギュレン氏が安心して亡命できる国は、エジプトしかなかろう。もちろん、アメリカが彼を追い出すことは、ほとんどないと思われるのだが、念のための、亡命準備の打診は、ありうるかもしれない。
エジプトでシーシ大統領がクーデターを起し、ムスリム同胞団のモルシー政権を打倒したとき、激怒したのはエルドアン大統領だった。イスラム色の強いエルドアン大統領のAKP(与党)と、ムスリム同胞団のモルシー政権とは、一衣帯水の関係にあったのだから、無理もなかろう。以来、エジプトとトルコとの関係は、劣悪な状態が続いている。
エジプト政府はいまの段階では、亡命受け入れ要請を、受け取っていないので、何ともしがたいが、もし正式に亡命要請があれば、検討する(前向きに)と答えている。
今回のトルコのク-デター打倒劇について、欧米の反応は冷たい。あるいは欧米諸国はこのクーデターが内部犯行、とみているのかもしれない。そのため、エルドアン大統領は事あるごとに、民主的な選挙で選ばれた、トルコ政府に対する挑戦のクーデターを、打倒したのに、欧米は冷たいと非難している。
アメリカ政府は民主的に選ばれた、トルコ政府を尊重すべきだ、と語っているが、トルコ政府が民主的だとも、エルドアン大統領が民主的な人物だとも、考えていない。そのため、エルドアン大統領の再三にわたる、ギュレン氏引き渡し要求には、証拠が不十分だとして、応じていないのだ。エジプトもしかりだ。