トルコではクーデター関与や、ギュレン派との関係を疑われた将兵多数が、逮捕されたり更迭されている。早い段階で二人の有力な将軍も辞任している。 もちろん、更迭逮捕にあったのは、最低でも尉官以上の人たちであり、その上の佐官クラスや、将軍たちもいた。
1700人以上の軍関係者が解雇され、1684人の軍人が除隊させられ逮捕されている。1684人にも及ぶ軍の中堅幹部以上の逮捕(将校クラスの40パーセント)、投獄更迭は一体、今後どのような変化をトルコの軍に、生み出すのであろうか。誰が考えても分かることは、軍が正常に機能しなくなる、という懸念であろう。
ところが、エルドアン大統領はそのことを、全く気にしていないようだ。軍と情報機関の権限を、自分の手中におさめ、全ての軍や情報部の情報が、直接リアルタイムで彼の手元に届くように、システムを作り替えてもいる。これで何の心配もないということであろうか。
アメリカとの関係でも、ギュレン氏の引き渡しに応じないアメリカが、実はクーデターの背後にいた、とまで言い出している。加えて、アメリカの将軍のインジルリク空軍基地入りでは、警察を張り付けて、嫌がらせもしているのだ。
これではアメリカ軍とトルコ軍との、正常な協力関係も崩れてしまおうし、アメリカはエルドアン大統領に対し、見切り発車をしてしまうかもしれない。そうなれば、エルドアン大統領の地位は揺らぎ始める、ということであろう。
エルドアン大統領のクーデター後の、軍に対する大英断は、IS(ISIL)には大歓迎であろう。IS(ISIL)はそれまでのトルコとの良好な関係が終わり、トルコ軍と対峙する状態にあった。しかし、軍幹部の更迭や逮捕でトルコ軍が正常に機能しなくなり、トルコ国内でのIS(ISIL)の活動は、フリー・ハンドになったということだ。
当面は、トルコの南東部でIS(ISIL)は支配地を広げる、戦いを続けていき、最終的にはジェイハーンなどの石油積み出し港や、石油ガス施設を支配するように、なるのではないのか。そうなれば トルコの経済は決定的なダメージを 受けることになるということだ。
IS(ISIL)は愚かなエルドアン大統領の、軍部への弾圧を大歓迎し、トルコの南東部で解放区を得たも同然の、状態にあるということだ。以前から書いているように、IS(ISIL)のイラクやシリアにおける戦闘は、ほぼ終了しているのだから、彼らはトルコに新天地が出来ることに、大喜びであろう。
そして、トルコの南東部は、IS(ISIL)の新たな国家になり、ガズアンテペ、マルデン、ハッカリなどのうちの、いずれかの都市が、IS(ISIL)のイスラム国家の、首都になるということだ。
その後、IS(ISIL)はクルドのPKKとの戦闘も覚悟していよう。そうなればトルコ軍、IS(ISIL)、PKKによる、トルコの南東部で三つ巴の戦いが、始まるということだ。その状況下で、トルコ軍は十分に機能できないために、戦闘は長期化する危険性があろう。
そうなればトルコは中央アジアやイラン、イラクそしてロシアからのエネルギーの、ハブになることも困難になり、経済は大ダメージを、受けるということになろうことは、明らかではないか。