『訪露の効果・トルコのシリア対応180度転換』

2016年8月12日

 

 トルコのエルドアン大統領は、シリアのアサド体制を打倒する、と息巻いていた。しかし、エルドアン大統領が訪ロした後、この強硬対応は完全に、様変わりをしたようだ。

 トルコの在ロシア大使ヤルドム氏は『シリア解決にシリアのリーダーが、しかるべき役割を果たすことに、反対しない。』という発言をしている。そのことはアサド大統領が、シリア問題解決交渉に参加することも、認めるということであろう。

 また、『アサド大統領が政治的変換の、この時期にしかるべき役割を、果たすことに反対しない。』とも述べている。しかし、トルコのチャウソール外相は『政治的変換のこの状況で、アサド大統領が参加することは不可能だ。』とも語っている。

 この矛盾は何を意味しているのであろうか。多分にトルコ的な、政治を配慮した発言ではないのかと思われる。つまり、トルコ政府は一方において、アサド大統領受け入れを語り、他方では、これまでと同じ立場を維持していることを、印象付けたのではないのか。だが、本音はアサド大統領受入れ、であろうと思われる。

 それは、エルドアン大統領が訪ロした後、ロシア政府がシリアにおける基地の拡張を、正式に発表しているからだ。その基地とはラタキア市に近い、フメイム空軍基地だ。

 しかも、このフメイム空軍基地には、核兵器も持ち込まれることになり、大型の爆撃機も持ち込まれる、ということのようだ。つまり、ロシアはシリアに恒久的な軍事基地を、整備していく方針だ、ということであろう。加えて、タルトース海軍基地についても、整備をしていく方針のようだ。

 そして、それはトルコがロシアのシリアでの、軍事恒久プレゼンスを、認めたということであろう。国内にあるインジルリク空軍基地の、NATOによる使用は、今後不確かなものに、なっていくのではないか。

 トルコがロシアのシリアへの軍事進出と、基地の恒久化に備えた、拡張を進めるということは、トルコとロシアとの関係が大幅に改善する、という前提でなければありえない話だ。

 これまで、トルコとロシアは仮想敵国同士であった。そして、双方は何時でも戦争が起こる、雰囲気であったのだ。それがエルドアン大統領の訪ロで、全く違う状況が生まれた、というとであろう。

 エルドアン大統領は715日に起こった、クーデターの背後には、アメリカがいたと明言している。それはアメリカに対する、最後通牒であったろう。そして今、そのアメリカに対抗するロシアと、手を組んだということであろう。それがトルコのシリア対応にも、大きな変化を生んだ、ということであろう

 この結果、中東地域は激変が予想されるし、親米アラブ諸国にとっては脅威となろう。ロシアとイランとの関係も、進展していることを考えると、サウジアラビアを始めとする、アラブ湾岸諸国は肝を冷やしているのではないのか。