『中東地域に大変革・エルドアンの暴走か』

2016年7月30日

 

 クーデターの鎮圧に成功した、トルコのエルドアン大統領は、その後、国内で彼の権力を拡大強化しているようだ。その典型的なものは、軍と情報部を彼の手中に収める、という決定であろう。こうなると、誰もエルドアン大統領に敵対できなくなることは、明白であろう。

 クーデターが発生したとき、イスタンブールからアンカラに、ミサイルが運ばれるのを阻止した警察は、エルドアン大統領によって賞賛され、国内での力を強めている。また判事や検察もエルドアン派が優位に立ち、これでますますエルドアン大統領の立場は、強化されたわけだ。

 国内だけではない、外国に対してもエルドアン大統領は息巻いている。インドネシアにあるギュレン派の学校を閉鎖するよう、強い圧力を掛けているし、それ以外の国々でも同様のことをしている。

 アゼルバイジャンでは、ギュレン氏とのインタビューを放映したテレビ局が、放映停止処分を受けている。トルコはアゼルバイジャンとアルメニアとの紛争で、アゼルバイジャンを支援していることから、アゼルバイジャンとしてはエルドアン大統領に対して、配慮する必要があるのであろう。

 問題はアメリカに対する、エルドアン大統領の攻撃的な姿勢だ。最近になって、エルドアン大統領はクーデターの背後に、アメリカの将軍が関わっていたと明確に語り始めている。以前から閣僚クラス首相などは、この意見を口にしていたが、エルドアン大統領がはっきりと、それを口にするということは、アメリカとトルコとの関係に大きな影を落とすことになろう。

 エルドアン大統領がここまで、アメリカに怒りを顕わにするのは、アメリカがギュレン氏の引渡に、応じないからであろうか。これまでも再三に渡り、ギュレン氏を引き渡すよう、トルコはアメリカに働きかけてきたが、実現しなかった。

そして、今回のクーデターでは、エルドアン大統領はギュレン氏が黒幕だとし、引渡を要求したが、アメリカ政府は確たる証拠を出せば検討すると答え、らちがあかない状態が続いている。

エルドアン大統領のアメリカに対する執拗なまでの食い下がり、ギュレン氏引渡問題と、アメリカの軍人がクーデター関与していた、という発言問題は、確実にアメリカとトルコとの関係を、悪化させていこう。

トルコは意図的にアメリカとの関係を、悪化させようとしているのではないか、とさえ思われるほどエルドアン大統領は、敵対的な言動を繰り返しているが、その裏には、ロシアとの関係を強化していくことを、狙っているからなのかもしれない。

ロシアはトルコ経由のガス・パイプラインを、引く計画を進めており、それはヨーロッパに対する、ロシアの影響力を強化させることになる、トルコはロシアにとって、重要なパートナーなのだ。トルコ側にとっても、この問題は重要であり、しかも、ロシアは観光、農産品、繊維雑貨などの取引相手として、重要な国家なのだ。

トルコのエルドアン大統領の最近の言動は、NATOに影響を及ぼし、アメリカの中東戦略に影響を及ぼし、中東地域全体だけではなく、ヨーロッパ諸国にも大きな影響を、及ぼすものになりそうだ。しかし、エルドアン大統領の自信の拡大と、その結果としての大言壮語は、彼にとって極めて危険なものでもあろう。