『トルコの学者に聞いたクーデターとその前後』

2016年7月29日

 

 先日人の紹介で、私の事務所にトルコの、女性学者が訪問した。彼女は教鞭をとる傍ら、雑誌や新聞にも投稿している人物だ、ということだ。したがって、今回のクーデターに関する、前後の状況を聞くには、最適の人物だった。

 幾つもの質問項目を用意し、手ぐすね引いて彼女の登場を、お待ちしていたのだが、クーデターのショックは、大分大きかったのであろう。30代後半の彼女にしてみれば、クーデターは今回が物心ついてから、初のものであったろう。

 クーデターが起こった日の朝は、ツイッターで情報が、飛び交っていたということだ。そしてその後、エルドアン大統領がテレビに映り、国民にクーデター阻止のデモを呼びかけた。次いで軍幹部逮捕の情報が流れ、クーデターは収まったということだ。

ジャーナリスト逮捕が続き、ギュレン関係者の逮捕も続いた。軍に対しては黒海、シリア、イラク国境、インジルリク空軍基地などにいる、クーデター側の軍人に対する、徹底して逮捕が行われた。

彼女の印象では、軍が分裂しており、クーデター派と反クーデター派に、分かれていたということだ。今の状況は、社会が不安定になっており、何でも起こりうるということだが、彼女が語ったように、クーデターに参加した将兵は、刑務所で男性による男性に対するレイプ、拷問を受けている、ということだ。

こうした状況のなかで、国民は強いリーダーの登場を熱望し、エルドアン大統領支持が強まった。クーデター後は弁護士を呼ぶことが、政府によって禁止され、法的手続きは、とれない状態が続いている。

クーデター後の早い段階から、トルコでは反米、つまりアメリカがクーデターに関与していた、という情報委が飛び交っていた。しかも、クーデターの資金は、CIAがナイジェリアから送り届けていた、とも伝えられた

クーデターの後に目立った対外関係では、NATOEUとの関係が後退し、その逆にロシアとの関係が強化された。

EUとの関係は今後、悪化の一途を辿り、トルコのEU加盟は消えたのではないか。しかし、国内的には与野党の接近が見られ、なかでも与党AKPと野党CHP,MHPの関係は飛躍的によくなっている。

この教授はギュレン派でも、エルドアン派でもない、と言っていたがそうであろう。今回のクーデターは誰が起こしたのか、という質問に対して軍内部からだと答えていた。それは彼女がいずれにも属さない、中立的な立場の人だからであろう。

それでも、彼女もツイッターのなかで、逮捕するべきだ、ということを書き込まれた、と語り、帰国が不安ですとも話していた。弁護士が呼べない、裁判が行われない状態で、不幸にして逮捕されれば、刑務所に期限不明確のまま、閉じ込められるということだ。