『テロとクーデターの騒ぎの裏でイスラエルの占領拡大』

2016年7月26日

 

 東大のある中東専門の教授が、左翼であったこと、そして多くの若手研究者が、彼を支持していたこともあり、中東問題専門家でパレスチナ革命を語らない者は、完全に相手にされなかった時期があった。

 時代は変わったのであろうか、あるいは、彼らがパレスチナ革命という酒に、飽きたのであろうか。いまパレスチナの占領地では、とんでもないことが進んでいるにもかかわらず、かつてのパレスチナ支持研究者たちは、ほとんど口をつぐんでいて語ろうとしない。

 パレスチナ占領地区は2地区あり、一つは、エジプトに隣接するガザ地区だ。そこはムスリム同胞団の結成した、行動組織ハマースが権力を握っており、イスラエルに対する武力闘争を、継続している。

 もう一つは、ヨルダン川西岸地区で、ここはパレスチナ自治政府の、マハムード・アッバース議長が支配している。マハムード・アッバース議長の政治姿勢は、イスラエルとの交渉を、あくまでも継続する、というものであり、武力闘争を展開する意思は、全く無いようだ。

 彼のパレスチナ自治政府は秘密裏に、イスラエルとパレスチナ自治政府双方にとって、不都合な人物や動きに関する、情報交換を行っている。従って、パレスチナ自治政府が発表する立場は、あくまでも国際社会という舞台向けの、セリフに過ぎない。

 そうした『なあなあ』のなかで、テロがヨーロッパ各国で起こり、トルコでも起こっている。そして、そのテロの主役であるIS(ISIL)が、イラクやシリア、最近ではリビアを始めとする、北アフリカ諸国でも活動している。

 このため、国際社会は誰もパレスチナの現状に、注目しなくなっているのだ。そうしたなかで、イスラエルはガザに対しては、軍事攻撃を継続しており、物資の搬入や水、電力の供給も渋っている。述べるまでもなく、そこで生活しているパレスチナ人には、大変な苦痛であろう。

 ヨルダン川西岸地区と東エルサレムでは、着々とユダヤ人の入植が進んでいる。最初に非合法に入植したユダヤ人たちに対して、イスラエル政府が後追いで認める形をとっている。つまり現状固定ということであろう。

 結果的に、パレスチナ人たちのヨルダン川西岸地区での、生活空間は狭められ、家屋を破壊され、土地を没収された人たちも少なくない。ヨルダン川西岸地区はABC3地区に分けられ、パレスチナが完全支配する地区と、イスラエル・パレスチナ双方で管理する地区と、それ以外の地区に分けられていたが、いまではそうした区別が、無くなっているのだ。

 どの時代にも、何処の地域でも、大衆は我慢の限度を超えると暴発する。パレスチナ人だけが、例外ということはなかろう。最近になって頻発している、パレスチナ人のナイフによる、イスラエル人殺傷事件は、その顕れであろう。